東急の「南町田」再開発には欠けている点がある 施設の周辺が見えない「閉じた空間」だ
しかしながら、南町田グランベリーパークの駅、商業、公園の一体的空間作りを見ていると、印象としては「テーマパーク」のような空間を作っているように見える。たまプラーザや青葉台といった田園都市線の他の駅は駅前に商業施設があってもバスターミナルや周辺街路への導線が見える。一方で南町田グランベリーパークの場合、駅という他のまちの入り口から誘導されるように商業施設、そしてスヌーピーミュージアムや鶴間公園へと誘導されてしまい、施設周辺のまちが見えにくい。
さらにいえば鶴間公園は境川に沿っていることもあってか周辺より低い場所にあり、こちらも周りのまちに対して視線や意識が向きにくい。このような導線設計や地形では、来街者はこのまちには南町田グランベリーパークという「閉じた空間」しかないように感じてしまうだろう。そのようなまちづくりが田園都市線沿線を知ってもらうためのまちづくりといえるのだろうか。かなり疑問が残る。
住民と来街者が混じりやすい拠点が必要
では、郊外まちづくりではどのような仕掛けをすればいいのだろうか。あくまで筆者の見解ではあるが、もっと南町田グランベリーパーク駅周辺の住民と他のまちからの来街者が混じりやすいような拠点を作り、エリアマネジメントといったソフト面の施策も合わせて行う必要がある。
また、田園都市線は「混雑」というイメージが強い。そうなるとなかなか南町田から渋谷および都心まで通勤したいと思う人は少ないだろうし、近年の住まい選びの傾向からいっても職住近接を意識することは重要だ。実際に今後の南町田グランベリーパーク駅周辺の再開発ではコワーキングスペースを設置するというが、コワーキングスペースだけではなかなか職住近接には結びつきにくい。もっと踏み込んだ施策が求められる。
例えば同じ東急の沿線でも渋谷ではIT産業を中心とした企業が集まっていることを意識し、駅周辺の再開発では産業交流拠点の設置やオフィスワーカー向けの商業施設にすることで職住近接を誘導しようとしている(2019年11月1日付「本日開業『スクランブルスクエア』は誰が行く?」参照)。このように地域の強みを生かす取り組みや、あるいは新しく強みを作り出すような取り組みがほしいところだ。
東急は洗足や田園調布といった住宅地開発から始まった会社だ。そして近年も郊外のまちづくりを意識した施策を沿線各地で多く行うようになってきた。だからこそ、今回のような閉じたエリアを志向する再開発ではない、もっと周りのまちに広がるチャレンジングなまちづくりの取り組みを期待したい。
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