パッと見「イケてる会社」がどん底に陥る6兆候 若い起業家の「未熟な行い」は最高の危険信号
このような考えが高じると、さらに10億ドル(株主の金)で、J.クルーの広告に出た男が運営するブログのプラットフォーム(タンブラー)を購入してしまう。結局は収益のほとんどないポルノサイトに11億ドルを支払う羽目になった。
私は金融危機が起こる以前、32歳のときにダボスで開かれる世界経済フォーラムに招かれた。当時はインターネット世界の起業家は新たな世界の支配者だったのだ。
そこでは私からビジネスについての見識を学ぼうとするCEOたちと会った。私はユニークな見識を持っていたからだ。と言いたいところだが、そうではない。
私はそこそこの才能に恵まれたというだけの32歳で、時代が違えばそこそこの生活を送っていたはずの人間だ。しかしそこでは、私はグランドマスターのヨーダであり、自分より才能のある実業家たちに、彼らの企業はどうすればいいかレクチャーしていた。
ITバブルがはじけたとき、私は34歳で再びダボスに行った。そこなら私は逮捕される心配はなかった――誰も私に会おうとはしないから。
若い起業家の大半は「未熟者」にすぎない
景気が悪いときは、白髪がリーダーシップの象徴とみなされる。景気がいいとき(浮ついているとき)は、若さがありがたがられる。
エヴァン・シュピーゲル(スナップチャット創業者)やジャック・ドーシー(ツイッター創業者)は並はずれた才能に恵まれた若者たちだ。彼らが起こした会社の価値は何億ドル、ときに10億ドルの値をつけているが、何百億ドルにまで達することはないだろう。
スナップ、ウィワーク、ウーバー、ツイッター(すべて合わせるとボーイング社の時価総額を超える)を運営する若者たちは、才能にあふれている。しかし来世にはおそらく(楽観的に見ても)大企業の副社長にとどまり、それで心から満足するだろう。
20代でニューエコノミーの会社をいくつかつくった先人の1人として言えることは、若いCEOの最大の美点は、愚かすぎて自分が失敗すると考えられないことだ。若いCEOたちは常軌を逸した道を進み、それで常軌を逸した天才になることがたまにある。
しかし大半は未熟者であり、何百人、何千人もの社員の家族を養うだけの能力は持ち合わせない。
ITブームが今後も続くなら、これから10年の間に、ティーンエイジャーが時価総額10億ドルのIT企業をつくってCEOになる可能性はゼロではない。そのようなことが本当に起きたとき、私たちは経済が全面的に破壊される窮地に立ったことになる。
そのティーンエイジャーは黒いタートルネックを着ていたり、従業員をクソみたいに扱ったり、タトゥー、鼻輪など、若者が好む装身具をつけているかもしれない。社会はそいつをイエス・キリストのように扱うだろう。
いま私たちは性格や思いやりといったものではなく、イノベーションと若さを崇拝している。
(翻訳:渡会圭子)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら