地方鉄道の「カリスマ社長」が新任地で挑む課題 鉄道運営の「仕組み」を変える必要がある

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

――自治体に鉄道に対する理解者がいるというのは心強いですね。鉄道会社が何かを企画しても、沿線の方たちの協力が得られないのであれば、結局のところ、何もできないのではないかと思います。

実は今、糸魚川駅の直江津寄りに再来年の開業を目指して、新駅をつくるというプロジェクトが進められています。地元の人たちは50年前からこの計画を暖めていたのだけれど、実現することができなかった。それはなぜか? 実はこの場所に交直流の接続区間があって、電車を止めることができなかったのです。

日本海ひすいラインの糸魚川―青海間を走るディーゼルカー。同線は電化されており架線があるが、旅客列車はディーゼルカーでの運転だ(写真:えちごトキめき鉄道)

けれども、えちごトキめき鉄道で運転しているのは気動車です。それであれば、駅を作ることができるじゃないかということで、計画が再び動き出し、運輸局の認可を得ることもできました。

まだこれから先、予算をどこから捻出するんだ?というような「大人の話」はありますけれど、それは置いておいて、鉄道の世界に新しい話題が生まれる。これってすばらしいことだと思いませんか。その新駅は、先ほど申し上げた翡翠が採れる海岸にあり、新しい観光の拠点になる可能性もあると思っています。

新たな動きを継続的な力に

前任地のいすみ鉄道で鳥塚氏が国鉄形気動車の運転を始めたとき、これに着目した人は決して多いとは言えなかった。それでもお披露目の日には1000人の行列ができ、連日多くの観光客が訪れるようになって、周囲の人の見る目も変わっていった。
もちろん、これまでにも鉄道を見直そうという趣旨のイベントは全国で行われてきた。昭和50年代に全国で流行した蒸気機関車の静態保存も、趣旨としてはこれと同様のものだったであろう。しかし、それらの多くは時が経つとともに人から忘れ去られた存在となってしまった。全国に朽ち果てた姿をさらしている静態保存の蒸気機関車が数多くあることは、多くの人が知っていることだろう。
大切なのは、新しく生まれた小さな動きを、より確かなものへと育て上げてゆく継続的な努力であるのかもしれない。
(後編に続く)
池口 英司 鉄道ライター、カメラマン

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

いけぐち・えいじ / Eiji Ikeguchi

1956年東京都生まれ。日本大学藝術学部写真学科卒業後、出版社勤務を経て独立。著書に『国鉄のスピード史―スピードアップがもたらした未来への足跡』(イカロス出版)、『鉄道時計ものがたり―いつの時代も鉄道員の“相棒”』(共著、交通新聞社新書)、『JR旅客6社徹底比較』(河出書房新社)、『さらに残念な鉄道車両たち』(イカロス出版)等。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事