地方鉄道の「カリスマ社長」が新任地で挑む課題 鉄道運営の「仕組み」を変える必要がある

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――昨年6月まで社長を務めておられたいすみ鉄道の営業距離は26.8kmですから、それと比べるとずいぶん長い路線という印象があります。

そうですね。えちごトキめき鉄道は2つの路線を合わせておよそ100kmの長さがありますから、これは長いです。当然、車両の運用も難しくなりますから、今はそれを勉強しているところです。

鳥塚氏がいすみ鉄道の社長となったのは、2009年6月のこと。公募によって123人の中から抜擢されての就任だった。任期中、鳥塚氏は鉄道ファンであることを広言し、その知識を生かしてさまざまな活性化策を展開。存亡の危機にあった同鉄道は、今日ではウィークデーでも多くの観光客が訪れる路線へと変貌を遂げている。

ひすいと残雪、沿線の美しさ

――実際に現地に赴いてみて、気づいたことはありますか?

「日本海ひすいライン」の海岸沿いを走る列車(写真:えちごトキめき鉄道)

先ほど申し上げた「海線」は、実際に沿線の海岸線を歩いてみますと、本当に翡翠(ひすい)がそこにあるのですね。それはそのまま宝飾品にできるような純度の高いものではないのですけれども、自分で拾ってひと手間かければ、部屋の飾りにできるかもしれない。この翡翠をお客様の自宅に届けるサービスや、どこかの駅に職人さんに来ていただいて、宝飾品作りの体験ができるツアーを設定できないか、いま考えているところです。

一方の「山線」では、春に現れる山肌の残雪が言葉どおりに、本当に馬の形に見える場所があります。えちごトキめき鉄道の沿線が、そのような美しい場所であることは、現地に何度も赴くようになって初めて気がつきました。

――「海線」「山線」それぞれに、豊富な観光資源があると。

残雪の山並みをバックに走る「妙高はねうまライン」の列車(写真:えちごトキめき鉄道)

「海線」と「山線」が接続するのは直江津ですが、直江津はJR東日本とJR西日本が接続する駅でもあるわけです。そのような背景がありますから、えちごトキめき鉄道にもJR東日本とJR西日本のOBがたくさん在籍して、運輸にも車両にも営業にも、柔軟な発想ができる人がたくさんいる。

50代、60代のおじさん社員に元気な人がたくさんいて、若い人を引っ張っている。これはすばらしい社風だと思います。私も、従業員の方たちに「JR時代にはできなかったことを、ここでやりましょう」と言っています。

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