日銀の貸出支援拡充、利ザヤ縮小圧力の懸念 銀行のホンネは「ありがた迷惑」

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2月19日、日銀が打ち出した貸出支援制度の拡充策は市場から好感されたものの、「支援」を受ける銀行からは効果を疑問視する声も出ている。1月撮影(2014年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 19日 ロイター] -日銀が打ち出した貸出支援制度の拡充策は市場から好感されたものの、「支援」を受ける銀行からは効果を疑問視する声も出ている。

すでに国内銀行のバランスシートには低利の預金があふれ返っている状態で、さらに低コスト資金の供給で実体経済にマネーを送り込もうとすれば、資金需要の大幅な高まりが見えない中で、利ザヤの縮小に拍車が掛かる懸念も生じるとの指摘が出ている。また、不動産などの資産バブルを引き起こす可能性も指摘されている。

銀行の本音は「ありがた迷惑」

「大きな声ではとても言えないが、ありがた迷惑」――。ある大手銀行の幹部は、今回の日銀の貸出支援制度の拡充策をこう評する。

邦銀の悩みの1つは、利ザヤの縮小に歯止めが掛からない点だ。貸出金残高と利ザヤを掛け合わせて生じる預貸金収益は、利ザヤの縮小を貸出の伸びで吸収できず、減り続けている。この幹部は「貸出支援制度の拡充は、利ザヤの縮小に拍車を掛ける」と懸念する。

銀行アナリストによると、銀行の調達金利は預金保険料などコストを加味すると0.15%程度。日銀の貸出支援策は貸付金利を4年固定の年0.1%としており、低コストであることは間違いない。その分、貸出金利を引き下げることができる。

企業側も低利調達が可能になるため、一部では借り入れを起こそうする動きにもつながる。

しかし、企業の資金需要は決して盛り上がっているわけではない。「過剰設備や過剰人員はリストラなどで対処可能だが、過剰債務に対する恐れが企業に染み込んでいる」(銀行幹部)中で、対外借り入れで設備投資資金を賄う動きはなかなか潮流になっていないという。

こうした中で、貸出増を図ろうとすれば金利ダンピング競争は不可避。日銀による低金利マネーの供給は、さらに金利競争に拍車を掛ける懸念がある。

バブル形成の懸念も

もう一つの懸念は、不動産などの資産バブルを形成しかねない点だ。黒田東彦総裁は18日の会見で、貸出支援策の地方銀行への活用を促す姿勢を示した。ただ、地方経済の資金需要は、大都市圏と比べてさらに盛り上がりに欠けるのが実情だ。

不動産バブルの兆候はないものの、「銀行の貸出圧力がさらに強まると、今はまだブレーキが掛かっている不動産向け融資に大きく傾斜していく可能性は否定できない」(証券会社の金法担当者)という。

不動産向け融資は表向き伸びていないが、運送業や小売業の物流拠点名目とした「隠れ不動産向け融資」が少しずつ増えているという指摘も銀行関係者からは出ている。

日銀は制度拡充によって貸出増加支援の最終的な残高は30兆程度になると見込んでいる。

ある銀行幹部は「ニーズがあるかと言われれば微妙だが、制度が拡充される以上、申し込みはせざるを得ない。残高はある程度は増えるだろう」と語っている。

(布施太郎 編集:田巻一彦)

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