「天下のメルセデス」を襲った品質低下の危機 リコールを繰り返し販売不振になった教訓
ノーネクタイは、今でこそビジネスシーンでも日常だが、その頃はそうではなかった。とくに、公式の場で一流企業の幹部が、、となると抵抗があった。
ノーネクタイやカジュアルな装いは、ふだんから馴染んでいないとおかしなことにもなりがちだが、サーカス小屋のメルセデス幹部はまさにそれ。加えて、われわれゲストは、いつも通りにスーツとタイの装いだから、その対比は不自然であり滑稽でさえあった。
「これはおかしい。これではメルセデスのカリスマ性が失われてしまう。ユーザーはカリスマ性のないメルセデスなど求めていない」。僕は親しい広報スタッフにそう言った。彼も困惑した表情ながら頷いていた。
再び「最善か無か」へ
ノーネクタイ/カジュアル事件は2度と繰り返されなかったが、当事者たちも居心地は最悪だっただろうし、、メルセデスのやることではないと気づいたのは当然のことだろう。
上記のように、グローバル化に伴ったアクションにはいろいろな混乱と痛みが伴った。信じがたいようなことも起きた。
しかし、初心に返り、再び「最善か無か」の社是を掲げるようになったメルセデスは本来の姿を取り戻した。
長く、深く、分厚く、誇りに満ちた歴史を下敷きに、、再生を図った新生メルセデスは、再び輝きを取り戻している。今、「スリーポインテッドスター」は、多くの憧れの的として君臨している。
(文/岡崎宏司)
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