「天下のメルセデス」を襲った品質低下の危機 リコールを繰り返し販売不振になった教訓

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自動車産業は1990年代からいろいろな意味で大きな転換期を迎え、多くのメーカーが荒波にもまれ、多くの問題課題を抱えていた。

しかし、「天下のメルセデス」ゆえに、たとえ他と同様なレベルの問題課題であっても、際立ってネガティブな印象をもたらしてしまうのはやむをえないのだろう。

たとえば、バブル最盛期に開発された7代目カローラ(1991年)の立派さ、バブル崩壊後に開発された8代目カローラ(1995年)の貧弱さ、、その違いは驚くべきものだった。だが、そのことが、メルセデスのように世界中から注目され、指摘されることはなかった。

メルセデスの変化に関しては、こんな思い出もある。

グローバル化で迷走したイベントの夜のディナー

なんの新車発表会かは忘れたが、メルセデスがグローバル化を目指し始めて間もなくの頃だった。

メルセデス本社が行う国際イベントは整然としたものであり、カリスマ的雰囲気に支配されているのが常だった。イベントの夜のディナーにしてもしかりだ。

ところが、ある時、突然それが変わった。

場所も覚えていないが、ディナーが行われたのは、「カラフルなテント張りの小さなサーカス小屋」だった。

小屋の中にはなんの変哲もないテーブルと椅子が置かれ、迎えてくれたメルセデス幹部の出で立ちはノーネクタイ。ジャケットは椅子の背にかけていた人が多かった。カジュアルな装いの人さえいた。

驚いた。公式ディナーに参加するメルセデスの人たちといえば、ダークスーツにキチッとタイを着けるのが常だったからだ。

重い鎧を脱ぎ捨て、幅広い人たちに受け容れてもらいたい、多くの人たちに親しみを持ってもらいたい、、グローバル化を急ぐメルセデスがそう考え、アクションを起こすのは理解できた。頭では、、。

ところが、どうしても違和感はぬぐえない。町外れのサーカス小屋も、ノーネクタイも、カジュアルな装いも、、。

次ページ今でこそ日常的なノーネクタイだが…
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