3500人以上のがん患者と接した精神科医の学び 厳しい状況に向き合う中で生き方が変わる

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
苦しみが癒えるのは、悩みを理解してもらえたときです(写真:Pornpak Khunatorn/iStock)

私は精神腫瘍医としてがんの専門病院に勤めています。一貫して、がんに罹患された人とそのご家族の診療を担当しています。毎年お会いする人の数は200人以上で今まで3500人以上のお話を伺ってきました。

相手が抱えている悩みを十分に理解する

がんを体験した人が100人いらっしゃれば100通りの悩みがありますので、初めてお会いするときに私が第一に心がけるのが、その人がどのような悩みを抱えておられるのか、十分に理解しようとすることです。

そのためには、ある程度時間をかけていろいろなことを聞かなければなりません。拙著『もしも一年後、この世にいないとしたら。』でも触れていますが、例えば、その人がどんな人生を歩んできて何を大切にしてきたか、がん体験がその人の人生にどのような影響を与えたか、そして今何に最も困っているのか、ということを詳しく尋ねることが大切です。

面談の最初は、このようなことを知るために質問を繰り返します。そのうえで、私なりにその方の悩みが理解できたと思ったときにはじめて、「○○さんの中では、がんになることでこういう問題が起きたと感じられ、とても困っておられるのですね?」と私の理解を伝えます。

私が伝えた言葉に対して、相手が心の底から「そうなんです!」と言ってくだされば、最初の大切なステップがうまくいったことになります。

なぜなら人は、「自分の悩みを誰かが理解してくれた」と思えたときに、苦しみが少し癒えるからです。

また、私との対話の中で、だんだんもやもやとしたものが言葉になっていき、今まで自分でも気が付いていなかった部分も含めて、自分の悩みが整理されて理解できるという効果もあります。

さらに、その場で強い悲しみを表現される方もいますが、悲しみという感情は苦しみを癒やしてくれるので、次に進むために大切な役割を果たします。

次ページ20歳で白血病になった大学生のケース
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事