生みの親が明かす、新幹線「N700S」が極めた技術 外観の変化は少ないが、中身はパワーアップ

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主変換装置にはエネルギー効率がよく、発熱が少ない次世代半導体であるSiC素子を新幹線で初採用。低発熱なので冷却用の電動送風機が不要となり走行風だけで冷却が可能で、これも大幅な小型・軽量化に寄与した。

床下機器の小型化で走行に必要な機器を積んだ車両を8種類からわずか4種類に集約することが可能になり、編成構成の自由度が大幅に向上した。小型化のメリットは随所にあり、小型化によって新たに生まれた空間にリチウムイオンバッテリーを搭載した。

これによって、停電などによりトンネル内や橋梁上などリスクがある場所でやむをえず停止したとき、バッテリーを使って安全な場所まで自走することが可能となる。実際に2019年7月に三島車両所で時速30km程度での自走に成功しており、高速鉄道では世界初の技術となる。

車内も「最高の空間」目指す

また、停電中でもこのバッテリーによって数カ所のトイレを使用することができる。将来起こりうる東海地震への対応も考慮して、従来から改良されてきたブレーキや台車の異常を検知する機能もさらに強化。トータルとしてイレギュラー時の対応力も大きく改善された。

また、N700Sは営業走行をしながら、架線や信号システム、軌道などを監視できる機能を持ち、毎日の営業運行と同時に検測を行う。これにより、今まで以上に異常の早期発見が可能になった。一方で、検測専用車両の「ドクターイエロー」による集中的かつ専門的な検測は今後も定期的に行われ、双方の役割が分担されることになりそうだ。

車内も「最高の」空間を目指した。「視覚的ノイズを取り除いた」(上野氏)という車内は普通車、グリーン車ともに壁面の大きな覆いのような意匠が印象的だ。空調の吹き出し口も隠した。電源コンセントも全席に装着。停車駅が近づき、案内放送が流れると車内灯が一時的に明るくなり、棚上荷物の置き忘れ防止を促す。

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