生みの親が明かす、新幹線「N700S」が極めた技術 外観の変化は少ないが、中身はパワーアップ

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東海道新幹線では来春より700系が引退し、すべてがN700Aタイプでの運行となる。そして7月からはN700Sも仲間に加わる。「サービスの均一化を図り、いつご乗車いただいても一定水準のサービスをシームレスに提供できる」と、上野氏は言う。

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一方で、JR東日本の「グランクラス」のようなサービスの導入は、「一部の編成にだけ導入すると運用面で複雑化するうえ、サービスの均一化という面でもマイナス。全編成への投入となると膨大なプロジェクトになるため検討していない」と話す。高頻度大量輸送の東海道新幹線という性格を考えると、これがベストの戦略なのだろう。

ヘビーユーザーが多い東海道新幹線は、乗り心地のブラッシュアップにも注力している。気になる乗り心地は、「対向列車とすれ違っても気づかないほど」(上野氏)ということで、早く実際に体験してみたいところだ。

N700Aの「4次車」にする案も

N700Aはブレーキなどの改良を続け、現在3次車まで進化し、N700Sも当初はN700Aの4次車にするという考えもあった。しかし、「ここまで新しくできるなら新形式だろう」ということで、新形式のN700Sとして開発が進められることになった。

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とはいえ、N700Sのデザインは、現行のN700Aとあまり変わらない。ロゴマークと先頭車両の形状が若干異なるくらいで、外装は初代0系より続く白いボディに青のストライプ。新形式だからとカラーリングを大胆に変える発想は「まったくなかった」(上野氏)。

そもそもデザインを変えるという発想自体、開発の過程を通じて誰の口からも出なかったという。これが東海道新幹線の「伝統」だ。

新技術の固まりであっても、従来と同じ車両のように見せる。東京と大阪を結ぶ大動脈で日々変わらぬ安定輸送を続けるという姿勢がN700Sから垣間見られる。

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