「DNAが合わない」と言われた夫婦が選択した道 「寝返りを打たないで」と夫から言われた妻

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「発達障害の可能性があって、旦那さんのご両親も自覚があるのであれば、一度、旦那さんのご両親も含めて家族みんなで情報の共有をしておいたほうがいいね。1人で解決できる問題ではないから、まずは旦那さんと一緒にメンタルクリニックに行っておいで。

発達障害とか適応障害って、病気じゃなくて“障害”なんだけど、“勝手に舗装されている今ある社会の道が合わないだけ”というか、“道を歩かなきゃいけないのに、進む手段が船しかありません”みたいなことだから、治す、治さないというよりは、まずは紗季がゆっくり寝れる環境と、旦那さんに合う仕事のアドバイスをもらうつもりで行くといいよ。

きっと本人は自覚がなくて、メンタルクリニックに行くのも嫌がるだろうから、そのときは向こうのご両親にも協力してもらって、専門家に一度相談に行くほうがいいね」

紗季は、抜け道を見つけた感じでほっとした表情を見せ、私の話を真剣にメモしながら続けて言いました。

子どもができなかった

「実はもう1つあって……。私、どうしても子どもを産みたいの。絶対ママになりたいと思ってて、子どもが欲しくて結婚したくらいの気持ちなんだけど、何度してもダメだったから、先日レディースクリニックに行って検査したのね。そしたら、私の子宮年齢は20代で子宮も卵子も超きれいで元気だって言われて、すごくうれしかったんだけど……」

「よかったじゃん! 35歳過ぎると自然妊娠の確率は10%切ると言われてるから子宮年齢20代なんてすごいじゃん!」

「うん……。旦那も検査してもらったら、2人とも問題はなかったの。でもさ、体外受精したときクリニックの先生に、“もうこれはDNAが合わないです”って言われたんだよね……」

DNAが合わない? そんなことがあるのか?

主治医が何をもって“DNAが合わない”としたのかはわかりませんが、思いもしない結果にとても驚きました。

昔から面倒見のよい紗季の性格を考えると、旦那さんの問題よりもこちらの問題で“離婚”を考えるようになったのだとすぐにわかりました。DNAが合わないというのは、もう2人の子どもの可能性はゼロだということですから、「どうしてもママになりたい」という紗季としては崖から突き落とされたようなものです。

「それはなんともまた難しいことになってたんだね。さっきの話だと、子ども産まずして旦那さんと添い遂げるっていう思いは薄いよね、きっと。というより、もう離婚する方向で気持ちは固まってるんじゃない?」

「うん。そうなんだと思う。うちの両親ははなから反対だったから、離婚には賛成すると思うんだけど、旦那と向こうの両親になんて言えばいいのか……。まず旦那に話が通じるかっていう問題もある」

「確かにそうだね。きっといきなり“離婚”って話したら、ご主人パニックになっちゃうと思う。向こうの両親には絶対に事前に話しておいたほうがいいね。いざ離婚ってなった場合、ご主人が自分で家賃払って1人暮らしをしていけるとは思えないから、きっと実家に戻るでしょ。

それに、極端な話になるけど、パニックになっていきなり飛び降りとか何か予測しえない行動をとる可能性もなきにしもあらずだから、向こうのご両親と情報共有して、ご主人を見守っておいてもらうようにしておいたほうがいいね」

次ページ半年ほどして…
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