異常気象に企業も本気で対峙せねばならない訳 当たり前を再度根本から問い直す必要がある

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私は、アマゾンがEVトラック10万台導入の発表を行ったことは、これから多くの企業の行動に大きな影響を与えるものであると予想しています。日本で言えば、例えば「NTTが社用車をすべてEV車に切り替える」と発表したようなもの。クリーンエネルギーのエコシステム構築に企業も貢献する動きが加速することでしょう。

また、アマゾンは、これを契機としてコーポレートサイト「Committed to a sustainable future(サステナブルな未来へコミットする)」を開設しました。ここでは、2030年までに全出荷の50%でCO2排出量をゼロにする「シップメント・ゼロ」をはじめ、AWSでの再生可能エネルギー利用、事業全体をいかにサステイナブルにするかなどのイニシアティブが示されています。

アマゾン本社の公式ブログ『dayone』では、ジェフ・ベゾスは次のように述べています。「多くの企業が気候変動問題に取り組んでいますが、アマゾンはその中心的な役割を果たすべく、当社の規模を活用し、現状に変革をもたらす決断をしました。年間100億以上の商品を販売する当社と同規模のインフラをもつ企業がパリ協定の目標を10年前倒しで達成できたら、ほかの企業もその目標を達成できるはずです」

異次元のイノベーションを追及する

アンドリュー・S・ウィンストンは前掲の著書で「気候変動や資源の逼迫といった非常に大きな問題に立ち向かうためには、我々は新しい問題提起をしなければならない。長い時間をかけて培ってきた、『ものごとはこうあるべきだ』という思い込みを問い直すような、本質的なレベルでのイノベーションが不可欠だ」「今まで当たり前だと信じて疑わなかったことを、再度根本から問い直す作業である」と述べ、これを「異次元のイノベーション」と表現しています。

私は、同氏の「異次元のイノベーション」の中で、とくに「制約がイノベーションを生み出す」「イノベーションそのもののイノベーション」「失敗を認め、根本を覆すような異次元のイノベーションを目指す」という概念に注目しています。異常気象がニューノーマル化する中、私たちが環境問題に対峙するに際して強く意識する必要があるものであると考えています。

ここで事例の1つとして、「台風19号から甲府盆地を守った」として話題になった「信玄堤」を紹介したいと思います。信玄堤とは山梨県甲斐市の御勅使川と釜無川の合流地点に、戦国時代に同地「甲斐の国」を治めていた武田信玄が築いたとされる堤防です。

信玄堤は霞堤と言われ、上流から下流まで途切れることなく続く連続堤防とは違い、完全には遮断しない構造となっています。河川が氾濫すると、増量した水をわざと越流させ霞堤に導いて滞留させ、洪水のエネルギーを減じる仕組みです。

洪水を「完全に封じ込める」のではなく、洪水を前提に流域全体で水流を制御、リスクを分散するということです。現在の経営学で言えば、「レジリアント」な手法、つまりは、しなやかであらがわない手法ということになると思います。

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