トヨタ、「ヴィッツ」を「ヤリス」に改名する理由 9年ぶりの全面刷新、競合とどう差別化するか

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「ネッツの歴史はヴィッツの歴史と重なるだけに、車名の変更と併売化は複雑な思いだ」と関東のネッツ系販売会社の社長は語る。20年の歴史を誇るヴィッツの累計販売台数は約222万台。全国のネッツ店にはヴィッツの分厚い顧客基盤があるが、今後はトヨタ店やトヨペット店、カローラ店とも競合することになる。

新型ヤリスの発売は2020年2月中旬。併売化は同年5月。ネッツ店が独占的に新型ヤリスを販売できる期間は正味2~3カ月間だけだ。西日本のカローラ系販売会社幹部は、「ネッツ店の先行販売目標は6万台と聞いている」と明かす。

フィットやノートなど競合ひしめく

売れ筋車種とはいえ、2~3カ月間で6万台を達成するのは簡単ではなさそうだ。なぜなら、新型ヤリスが属するBセグメントのコンパクトカーにはホンダの「フィット」、日産の「ノート」、そして同じトヨタのHV専用車「アクア」と競合がひしめき合うからだ。

トヨタコンパクトカーカンパニーの新郷和晃エグゼクティブ・バイス・プレジデントは「実はアクアが一番のライバル」と苦笑する。実際、全チャネルで併売するアクアは2019年1~6月の登録台数は6万台と、ノート(6万8000台)に次いで国内登録車で3位だった。一方、ヴィッツとフィットは4万5000台でほぼ拮抗する。

前出のネッツ系販社社長は「新型ヤリスの一番の対抗は新型フィットになる。フィットの新しいハイブリッドが気になる」と語る。フィット(ヨーロッパなどでは「ジャズ」)はホンダのグローバル戦略車で、ヤリスに対抗して開発された経緯がある。

新型ヤリスの後ろ姿(撮影:尾形文繁)

現行の3代目は発売から6年が経ち、10月24日に開幕する東京モーターショーで4代目となる新型車のワールドプレミアを予定している。新型車にはi-MMDと呼ばれる2モーター方式のハイブリッドシステムが搭載される見込みで、燃費性能と加速性能では新型ヤリスと真っ向勝負になりそうだ。

吉田副社長は「競合とは切磋琢磨してBセグメントの市場を活性化していきたい」と余裕を見せる。1999年にトヨタが投入した新型ヤリスは優れた走行性能と広い室内空間を両立させてコンパクトカーの世界標準を作り、競合他社を本気にさせた。ヨーロッパのカー・オブ・ザ・イヤーを初めて受賞したのもヤリスだった。期待を一身に背負って登場する4代目ヤリスは、重圧をはね返して初代に匹敵する革新を起こすことができるか。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年から東洋経済編集部でニュースの取材や特集の編集を担当。2024年7月から週刊東洋経済副編集長。

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