中田敦彦が「YouTubeの世界」でも成功した必然 「失敗を恐れない姿勢」が彼の本当の才能だ

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中田は批判を恐れない。それどころか、自分にとって有益な批判は喜んで受け入れて、それを次に生かそうとする。批判されることで過度に落ち込んだり、感情的になったりしない。ここが中田とほかの芸人との決定的な違いだ。ほとんどの芸人には自分が守りたい「美学」があるので、批判を素直に受け入れられず、保守的になりがちなのだ。

中田はむしろ、有能な起業家のように、自身の活動を「仮説と検証のプロセス」と位置づけている。何かにつけて「試しにやってみよう。失敗した? はい、じゃあ次に行こう」という感じなのだ。一つひとつの失敗で傷ついたり、心を病んだりしない。

オリエンタルラジオのこれまでの活動を振り返っても、それは仮説と検証の繰り返しだったということがわかる。「武勇伝」で大ブレーク中の彼らが2008年に出したDVD『十』は、膨大な予算を注ぎ込んだコント映像集だった。もともとお笑いマニアだった中田は、ここで自分の映像作品をリリースするという夢をかなえていた。

同じく2008年には約80分ぶっ通しで漫才を演じるライブツアーを行い、「M-1グランプリ」を本気で目指した。だが、漫才は自分たちに合っていないと気づき、この道からは潔く撤退した。

その後も、若くして冠番組を持ってMCを務めたり、「しくじり先生 俺みたいになるな!!」から発展した『中田歴史塾』という中田メインの特番でプレゼン芸を披露したり、さまざまな試みを行ってきた。

「失敗を恐れない」メンタルの強さ

これだけのヒットコンテンツとなった『中田敦彦のYouTube大学』ですら、中田自身はそれほど思い入れが深いわけではないように見える。ヒットしたという事実も「へえ、そうなんだ」という冷静な目線で眺めているようなところがある。

おそらく、中田にとっては、ヒットさせることが目的なのではなく、「仮説と検証のプロセス」を回すこと自体が目的化しているのだ。企画を考えて、挑戦して、失敗して、また挑戦して、成功する。このサイクルを繰り返すこと自体が彼にとって楽しいことなのだろう。

中田敦彦という芸人の本当の才能は、戦略的思考力や行動力ではなく、失敗をいっさい恐れないメンタルの強さなのだ。

ラリー遠田 作家・ライター、お笑い評論家

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らりーとおだ / Larry Tooda

主にお笑いに関する評論、執筆、インタビュー取材、コメント提供、講演、イベント企画・出演などを手がける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)など著書多数。

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