小学生時に「読解力」の決定的な差が生じる理由 その基礎・基本は学校の授業では教わらない
では、われわれはどこで語彙を獲得しているのかといえば、基本的には身近な環境からなのだという。生まれたときから、親や身近な年長者(保育園の年長の子や親族、近所の人たち)の会話、あるいはテレビなどから音として言葉が入ってくるわけだ。
例えばそのいい例が、「印籠」だという。いうまでもなく、江戸時代に広まった、薬などを入れて腰に下げる携帯用の容器のことだ。
1980年代までに幼少期を過ごした層である30代は、好き嫌いは別としても大ヒット番組である「水戸黄門」を見たことがあるはず。一方、ゲームとインターネットの中で育った1990年代以降の世代は「水戸黄門」を知らないまま育つことが多いため、「印籠」の認知率も急激に下がっているという。同じことは、やかん、急須、ツバメ、わら、などの語についてもいえるようだ。
語彙の種類や量は環境要因に左右される
もちろん、「印籠」という言葉を知らなかったとしても、さほど困ることはないだろう。しかしそれは一例にすぎず、著者がここで強調しているのは環境の影響だ。
語彙の種類や量は、環境要因に大きく左右されるということである。事実、アメリカではそういった調査がよく行われており、「3歳に達するまでに、高学歴家庭と貧困家庭で育った子どもが日常的に聞く語数の差は延べ3000語に達する」との調査結果もあるのだとか。
言い換えれば、語彙の格差は学校教育ではなかなか埋まるものではないのだ。小学校低学年では、学校より家庭で過ごす時間のほうが長いので、どうしても家庭の語彙量をそのままのかたちで反映してしまうということである。
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