台風19号、東日本各地の鉄道に残した深い爪痕 新幹線車両基地に浸水、各地で土砂崩れ

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両毛線では、大平下―栃木(ともに栃木県栃木市)間にある永野川橋りょうで橋台の背面が流出。岩船―栃木間は再開まで1カ月程度が見込まれるという。

水郡線は、袋田―常陸大子(ともに茨城県大子町)間で第六久慈川橋りょうの橋桁が流出。また、国土交通省の発表や報道によると、このほかに西金―上小川間で橋りょうが傾き、磐城浅川―里白石間では橋りょうが流出した。

横須賀線の武蔵小杉駅(神奈川県川崎市)は、駅構内が冠水し使用できなくなった。このため13日は横須賀線と湘南新宿ラインの列車は同駅を通過していたが、14日初電から停車を再開した。ただ、現在も横須賀線側の新南改札口は冠水のため使用できず、南武線側の改札を使用しなければならない。

ここまでは、水郡線の一部を除きJR東日本本社が発表した「主な被害状況」に挙げられたものだ。

まだまだ被害は多い

だが、このほかにも被害を受けた路線や場所は多い。

青森県の八戸と岩手県の久慈を結ぶ八戸線は、階上―久慈間で運転を見合わせている。同線の陸中中野駅(岩手県洋野町)で駅設備に大きな被害が出ているためだ。国交省東北運輸局のまとめた被害状況によると、同駅では路盤が流出したという。運転再開までには相当な期間がかかり、JRはバスによる代行輸送を計画している。

群馬県の渋川と大前を結ぶ吾妻線は、国交省関東運輸局のまとめた被害状況によると、長野原草津口―大前間で土砂流入および電化柱の倒壊があった。同区間も運転再開まで相当な期間が見込まれるという。

このほか、長野県の小諸と山梨県の小淵沢を結ぶ小海線も被害が大きいとみられる。ツイッター上には滑津―北中込間で路盤がえぐられている様子がアップされ、JR東日本の公式運行情報アカウントもこの現場の写真を掲載している。同線は小諸―野辺山間で当面運転を見合わせる。

一方、運転再開の動きもある。仙台と山形を結ぶ仙山線は、JR東日本の運行状況を伝えるツイッター公式アカウントで東北福祉大前―北山間での土砂崩れ発生が伝えられたが、15日は始発から通常通り運転する予定だ。長野県を走る篠ノ井線も各地で被災したが、15日から運転を再開する。

今回の台風19号の被害は広範囲に及び、まだ全容がつかみきれていない部分もあるだろう。また、幹線系統の被害は貨物列車による物流にも大きく影響する。被害の程度を早期に見極め、対策を練ることが求められる。

小林 拓矢 フリーライター

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こばやし たくや / Takuya Kobayashi

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道・時事その他について執筆。著書は『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。また ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に執筆参加。

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