台風直撃でラグビーW杯「日産スタ水没」の懸念 水没した場合、日本戦開催に影響はないのか

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ただ、遊水池への流水による試合開催への影響はなさそうだ。遊水池として使われるのはスタジアムの1階部分のみで、堤防が設けられている2階以上に影響を及ぼすことは「物理的にありえない」(日産スタジアムを管理する横浜市体育協会)。実際にこれまでスタジアムの運営に影響が出たことはないという。

スタジアム周辺の通路なども、2階以上に整備されているため、アクセス面での影響はない。ラグビーワールドカップで1階部分はテレビ中継車などの駐車場として使われる予定だったが、その代替地もすでに人工地盤上に確保した。1階部分にあった備品などはこれまでの台風対策同様、2階以上に避難させているという。

試合当日、日産スタジアムが「水没」していたとしても、そのこと自体が試合運営に影響を与えることはなさそうだ。ただ、そのスタジアムの様子が世界に配信されることになる。

新国立競技場の「誤算」

実は、この状況は開催前から想定されていた。ワールドカップが開催される9月中旬から11月上旬は、日本における台風シーズンにあたる。もともと、日本開催を大会招致段階で不安視する声はあった。

一方で、招致側には誤算もあった。新国立競技場の問題だ。決勝戦などの重要な試合は当初、東京に建設される新国立競技場で開催される計画だった。その新国立には開閉式の屋根がつけられ、直接の天候問題はクリアされるはずだった。

周知の通り、新国立競技場の当初の整備案は1500億円を超える高額費用に批判が集中し、撤回される。結局、新国立は全天候型ではなくなり、建設そのものもラグビーワールドカップの開催に間に合わなくなってしまった。

代替地となったのが日産スタジアムだ。首都圏で1度に7万人近い観客を収容できるスタジアムはほかにはない。日産スタジアムは当初からラグビーワールドカップが開催される予定だったが、新国立競技場に代わり、決勝戦が開催されることになった。

招致の経緯を知る経済人は「日産スタジアムが遊水池であることは当然ながらわかっていた。決勝戦などはもっと天候影響の受けない施設で開催したかったが、ほかに選択肢がなかった」と振り返る。

もちろん、競技場が天候問題をクリアしたとしても、台風が上陸すればそれだけの問題にとどまらない。市街地への被害や交通機関に障害が発生することで、観客・チーム・ボランティア・その他関係者の安全が十分に確保できなくなる可能性が高いからだ。

この時期の日本開催である以上、台風による影響は排除できないリスク。日本戦の開催も、安全性を最重視して判断すべきなのは言うまでもない。それでも、ファンの理解と大会への熱いサポートがあれば、アジアで初めて開催されたラグビーワールドカップは成功裏に終わるはずだ。

並木 厚憲 東洋経済 記者

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なみき あつのり / Atsunori Namiki

これまでに小売り・サービス、自動車、銀行などの業界を担当。テーマとして地方問題やインフラ老朽化問題に関心がある。『週刊東洋経済』編集部を経て、2016年10月よりニュース編集部編集長。

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