最低賃金引き上げ「よくある誤解」をぶった斬る アトキンソン氏「徹底的にエビデンスを見よ」
2つ目。今も述べたとおり、生産性の向上は国の死活問題なので、できるだけエビデンスに基づく議論を展開するべきです。感覚的な話、抽象的な話など、統計やデータを無視した議論は意味がありませんし、その類の議論をベースに物事を決めるのは極めて危険だと思います。
3つ目。日本の場合、極めて急激なペースで人口が大きく減少するという、他国にはない事情があることを、海外との比較の中でしっかりと理解しておく必要があります。
アトキンソン氏が「10の疑問」に答える
では、疑問へのお答えに移りましょう。
この件に関しては、ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン教授が、以下のようにコメントしています。
また、今年の7月8日には、以下のようなコメントも残しています。
つまり、最低賃金が低ければ低いほど、引き上げによる雇用への影響は少なく、この件を立証する圧倒的な量のデータが存在するとおっしゃっているのです。
最低賃金引き上げの影響を否定的に捉える論文もあるにはあります。しかし、各国で行われた約20年間の検証の結果、データがそろってきたこともあり、雇用への影響はあっても、その影響は以前考えられていたより、だいぶ小さいと考えられるようになってきています。170カ国以上が実施している最低賃金引き上げに関する分析は、ドイツ、フランス、アメリカ、中国、韓国などのほか、途上国も含むさまざまな国で行われています。
また、最低賃金引き上げは現在雇用されている人には影響はなく、将来の雇用にのみ影響を及ぼすなど、次第に論調が変化する傾向も認められます。
日本はアメリカ同様に、最低賃金が極めて低く設定されていますので、クルーグマン教授のコメントを真摯に受け止めるべきでしょう。
また、人口が増加している国にとっては、将来の雇用への影響を懸念することも重要ですが、日本では今後人口が減少するので、事情が違うことも忘れるべきではありません。
この指摘をしてきたコメントには、「ここ1~2年の研究では抽出方法の改良が進み、イギリスでの最低賃金引き上げの影響が肯定的であるという説は否定され、アメリカ、スペイン、フランス、ドイツの直近の経済学者の研究では、失業の増加をもたらすと確認された。韓国は研究の結果を待つまでもない」とあります。
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