最低賃金引き上げ「よくある誤解」をぶった斬る アトキンソン氏「徹底的にエビデンスを見よ」
真逆です。実は、最低賃金引き上げの最大の効果は、格差を縮小させることです。
イギリスでは、最低賃金を導入した1999年には、最下層の人たちの所得は中央値に対して47.6%でしたが、2020年までに中央値に対して60%まで引き上げる計画を実行しています。
イギリスは1978年から1996年までの間、格差が一貫して拡大しましたが、最低賃金の引き上げによって、その間に開いた格差の半分が解消されました。アメリカの格差拡大要因の大半は、最低賃金の引き上げ低迷によるという分析もあります。
格差社会とは、最下位層と最上位層の所得格差が大きい社会のことですので、所得の中央値に対する最低賃金の比率が低くなればなるほど、この開きが拡大します。日本でワーキングプアの比率が高いのは、これが低いからにほかなりません。
最低賃金を引き上げて格差が拡大する唯一のケースは、失業者が大量に増えて、再就職ができないケースですが、そもそもそうならないように慎重に検証したうえで引き上げるべきなので、そういう事態は起こりえないでしょう。というより、起こさないようにすればいいのです。
「生産性を高めると格差が広がる」は大間違い
このご指摘には、いくつかの事実誤認が含まれています。
2018年のデータを使うと、大手先進国23カ国の生産性と貧困率の相関係数は−0.529です。生産性が高くなればなるほど、貧困率は低くなります。生産性と、格差を測るジニ係数の相関係数は−0.513です。生産性が高くなればなるほど格差が縮まるのは明らかです。
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