誰もがハマる「YouTube」は、本当に安全な場所か 本社のナンバー2が語る成長と責任(前編)
――評価者は皆、グーグルの従業員なのですか。
先ほど述べたように1万人という規模に広げなければならなかったため、人材供給と研修は外部のベンダーに頼っている。パートナー企業からコンサルタントや契約社員を受け入れ、グーグルの正社員と日々仕事をしている。
――ガイドライン違反の可能性がある動画は、往々にして暴力的であったり、嫌な気持ちになるものであったりします。人間の評価者には精神的な負担が大きいのではないですか。
評価者の規模を広げるにあたり、心身のケアは考慮すべき重要事項だった。1日8時間労働が一般的だが、1日のシフトは5時間までに抑えている。さらにいつでも休憩をしてよいことにしている。評価者が雇用されている間は、心身の健康を保つための研修プログラムが逐一提供される。年に2回ほど職員のアンケートも行い、体制に緩みがないようにしている。何か問題が起これば、すぐに外部ベンダーと協力して状況を是正する。
規定違反ではないが問題のある動画
――ユーチューブが「ボーダーラインのコンテンツ」と表現しているものがあります。つまり、違反かどうかの判断が難しいものです。国内外のネット上では、この基準が明確でないという声が上がっていますが、ボーダーラインかどうかの判断にはどのような根拠があるのでしょうか。
確かに、規定違反ではないが、有害な誤情報を流しているようなボーダーラインの動画がある。例を挙げよう。あなたが親で、以前子どもにワクチンを接種させた際に(副作用などが出て)よくない経験をしたことがあったとする。こうした親が(科学的な根拠に基づかずに)ユーチューブ上で自分の経験を発信することを禁止すべきか?
自分の子どものワクチンに対する反応について、親は声を上げる権利がある。一方で、親になったばかりで単に情報収集をしたいという人にとっては、個人の経験を語る動画よりも、大手病院が投稿した信頼できる動画をまず提示すべきだ。
これが、規定違反ではないが、ボーダーライン上にあるコンテンツのニュアンスを表す例だ。自分の経験を発信したい親を、私たちは抑圧したくはない。その一方で、大手病院が研究結果を基に投稿した動画と同じレベルで、ほかのユーザーにおすすめはできない。
そこでアメリカ国内では今年1月、ボーダーラインのコンテンツをユーザーにおすすめする頻度を減らすため、アルゴリズムを改定した。改定から数カ月で、ボーダーラインのコンテンツがユーザーにおすすめされた回数が改定前より平均で50%減少した。
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