十勝の食材で作る「美しすぎるクッキー」の凄み 趣味ではなくビジネスとして成功した秘訣
しかし販路や実績はゼロからのスタート。まずはインターネットで販売をしようと、独自のセンスと世界観でビジュアルにこだわり、Webサイトを立ち上げた。見た目が映える商品を作って、それを写真に収めてアップする。まだ“インスタ映え”などという言葉もなかった時代だったが、ブランドのイメージを何より大事に考えてきた。
この戦略が功を奏し、伊勢丹新宿店のバイヤーから声がかかる。
洋菓子フロアで厳選したお菓子を週替わりで紹介する「MA PÂTISSERIE(マ・パティスリー)」へ商品を出してみないか、というものだった。「製菓業を始める前から憧れていた舞台で自分の商品を販売できるなんて夢のようで。早い段階で百貨店という舞台に立てたのは本当に幸運でした」(甲賀さん)。
地産他消で魅力を伝えたい
一方で、失敗はできないというプレッシャーがのしかかった。「お客様へ感動をお伝えするにはどうすればよいか、心に残る商品とは何か」――。デザインや品質に求められる厳しい基準をクリアしていく中で、趣味ではなく、ビジネスとしてお菓子作りに携わっていくマインドが鍛えられたという。
今では同様に、ほかの百貨店とも取引があり、地元のホテルでウェディングギフトとしての取り扱いもある。「十勝産の素材がいかにすばらしいか。地産地消というよりは、“地産他消”で広く魅力を伝えていきたい」(甲賀さん)。
焼き菓子とは別に、近年、力を入れているのが十勝産のジャガイモを使った「ポテトフラワー」だ。これはジャガイモを裏ごししてマッシュポテトにし、製菓用の用具でバラ型に整形したもの。ピンクは「ノーザンルビー」、紫は「シャドークイーン」という品種を使い、ジャガイモそのものの色で演出する。
白い花びらには「北あかり」は黄色が強すぎるのであまり使わず、「男爵」などできるだけ白い品種を使う。ポテトフラワーも十勝のジャガイモに付加価値を付け、素材のすばらしさを伝えたい、という思いが根底にある。
基本はバタークリームでケーキの飾りを作る技術を応用したもので、甲賀さんのほかにもマッシュポテトのバラを作っている人はいる。しかし独自のセンス、美意識にこだわった写真が人々の目に留まり、2019年1月、甲賀さんのポテトフラワーは「2019挑む」としてNHKの道内ニュースで取り上げられた。
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