BMWと日産の「手放し運転」は何がどう違うのか 自動運転技術の進化に対する期待と課題

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今後、自動運転が進化するうえでカギとなるのが視線監視機能だ。運転中に手と足を放しても運転者の操作が必要な際に、すぐ操縦に戻れるよう監視するために搭載されている。冒頭のように視線を外すと警告を何度か行い、それでも視線が戻らない場合にはハザードランプを点灯させて停車させる。

BMWの新型3シリーズにも夏以降の生産分にハンズオフ機能が搭載されている(記者撮影)

これは、ハンズオフ機能時には操作なしでも車が進むため、注意が低下するのを防ぐ目的がある。2016年には国土交通省が現状の自動運転機能は、あくまでも運転支援機能だと警告を発している。運転支援の側面から見れば、視線監視など安全面の強化は非常に重要だ。

この視線監視については、BMWがハンズオフ中のみ視線を戻すように警告を表示するのに対し、日産は走行中常時監視し、警告を表示する。

また、BMWは渋滞時の前車追従も自動で行うが、日産自動車は30秒間停車した場合には、運転手が発進を指示しなければ進まない。自動運転システムの開発を担当した同社の浅田哲也主管は「運転手とのコミュニケーションを大切にした」と語る。

両社の速度制限にも違い

速度制限も異なる。BMWのハンズオフ機能は時速60㎞以下と限定されているが、前走車との適切な車間距離を維持しながら追従走行し、ドライバーの運転負荷を軽減するACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)では時速210kmまで出すことができる。一方の日産はプロパイロット2.0では道路標識を認識し、法定速度+10km以内に限定する。

そのほかの機能でも国内での制限速度で最も速い新東名高速一部区間の時速120kmを基準として、それ以下しか設定できないようになっている。ヨーロッパの制限速度が速いという事情はあるものの、あくまで運転者に責任があるという前提の下、どこまで許容するかというスタンスの違いも垣間見える。

技術を普及させるためには、ある程度価格を抑える必要がある。運転者に責任がある中で、どこまで運転者の監視に注力するのか。自動車メーカーは、安全性とコストのバランス感覚が問われている。

中野 大樹 東洋経済 記者

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なかの たいじゅ / Taiju Nakano

大阪府出身。早稲田大学法学部卒。副専攻として同大学でジャーナリズムを修了。学生時代リユース業界専門新聞の「リサイクル通信」・地域メディアの「高田馬場新聞」で、リユース業界や地域の居酒屋を取材。無人島研究会に所属していた。趣味は飲み歩きと読書、アウトドア、離島。コンビニ業界を担当。

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