0.001秒短縮に命を賭けた男たちの儲ける執念 高頻度取引に支配される金融市場のリスク
現在、株式投資をしている個人投資家も、そして日々パソコンに向かって売買しているデイトレーダーもまったく関係のないところで、HFT業者が日々すさまじい金額の売買を繰り広げてきたわけだが、実はHFTの現場は大きく様変わりしている。
執行アルゴリズム対HFTの戦い、ETF大崩壊のリスク?
HFT業者は厳しい競争にさらされており、業者の中には取引所へのアクセスに時間がかかるなら、自分たちで取引所を作ってしまおうという動きも見られた。現実に「私設取引市場(PTS)」を設立して、取引所よりも細かいスプレッド(売買の価格差)を設定して、より薄い利幅を獲得する競争になりつつある。
そもそも通信回線のスピード競争も、2014年あたりには決着がついてしまっている。2014年7月8日付のロイターの記事「焦点 超高速取引の厳しい『台所事情』、利幅少なく競争も激化」によると、すでに東証はこの時点で高速取引にとって欠かせない「コロケーションエリア」を、取引所近くに設置している。
コロケーションとは、東証の売買システムのすぐ隣に投資家向けのレンタルサーバーを設置し、直接ケーブルでつなぐサービスのこと。自己資金を使って売買を行うHFT業者の多くが、そのサービスを使っているとロイターは伝えている。
もともとHFTにはさまざまな批判があった。「見せ玉」を使って売買しているのではないか、スピードを制した業者が莫大な儲けを独占しているのではないかなどなど……。超高速で、超短期のHFTは東証など取引所の監視システムさえもくぐり抜けているのではないか……。そんな指摘が多いのも事実だ。
とはいえ、HFT業者側は株式市場に膨大な流動性を供給している、と反論している。実際にETFなどの設定や取引にはHFTが不可欠になっている。とりわけ、ETFは登場して以降、 アルゴリズムなどと連携して、今やほとんどコンピューター同士で取引されていると言っても過言ではない。
実際、 アメリカ市場の30%をETFの売買が占めており、「JPモルガン」の推計によると、人間同士でかわされるファンダメンタルズ分析に基づいた売買取引は今や10%程度にすぎない。残りの大半はアルゴリズム取引とHFTによって支配されているわけだ。
とりわけ、自動的に売買注文を出すアルゴリズム(執行アルゴリズム)とHFT=高頻度・高速取引との戦いが、日々繰り広げられていると言われている。その舞台となっているのがETFであり、そこに絡んでデリバティブ(派生商品)や先物、指数と逆に動くインバースなどが複雑に絡み合ってくる。
最近の株式市場は瞬間的に暴落するものの、またすぐに回復してくるという傾向を見せている。これはアルゴリズムとHFTによる特徴だと言われている。今のところ、まだ AI(人工知能)は与えられた使命を忠実に実行している人間の下僕だが、いずれは自分で判断して自立し、金融市場を支配しようとするかもしれない。
プログラム同士が取引する日も近づいており、取引所のサーキットブレーカー(一定の値幅で市場取引がストップする)が役に立たない日がやってくるのではないか……。大暴落と大急騰を毎日繰り返すようなマーケットになるのかもしれない。『ハミングバード・プロジェクト』は、そんな人類の抱えるリスクを垣間見せてくれる映画と言っていい。
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