静岡県知事「リニア工事も空港駅も全部話そう」 大井川の水資源「失われれば戻ってこない」

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――水問題を解決する技術的な方法は見つかるのでしょうか。

見つかるかもしれません。技術とはそういう類のものではないでしょうか。例えば、掘って出てきた水をすぐに凍結させて流れないようにするとか。水という希少なものを守りながら掘る技術を開発することがJR東海の課題だと思います。

――リニア中央新幹線計画についてはどうお考えですか。

静岡県の川勝平太知事(撮影:今井康一)

私は京都出身です。2007年に静岡文化芸術大学の学長になり、2009年に知事になりました。ですから静岡には12年しかいません。

その間、国土審議会の委員を1996年から昨年までおよそ四半世紀やってきました。リニア3大都市圏を1つにまとめる「スーパー・メガリージョン構想」の策定委員の1人でした。

1999年くらいからリニアにも乗っています。だから私はリニアに全面的に賛成していますよ。

もともと全面協力していた

静岡を通ることがわかったのは私が知事になってからです。ルートが決まってすぐに考えたことがあります。当時の東海道新幹線は1時間に平均13本走っていましたが、そのうち9本が静岡県内に止まらない速達タイプの「のぞみ」、残り4本が「ひかり」と「こだま」2本ずつです。リニアができれば、のぞみの機能はリニアが担いますから、東海道新幹線はひかりとこだまが中心になる。静岡県内に停車する本数が増えるのです。

2011年に交通政策審議会中央新幹線小委員会でリニアに関する答申が出されましたが、そこには「新駅の設置などの可能性」が生じるという記載があります。委員会の委員長をされていた家田仁先生(現・政策研究大学院大学教授)が「これは空港の下の駅ですよ」と、私にわざわざ言ってくださった。

注:JR東海は2010年5月の中央新幹線小委員会で、リニアが開業すればダイヤに余裕ができるため「新駅設置の可能性が広がる」と説明している(場所は特定していない)。静岡県は2010年7月の中央新幹線小委員会で富士山静岡空港の真下に東海道新幹線の新駅を設置する提案を行っている。2011年5月にまとめられた答申では「新駅設置の可能性」について触れられたものの、場所についての記載はない。空港の下に駅ができるかどうかについて家田氏は「そんな発言をした覚えはない」と知事の発言を否定している。

リニアのルートが決まって、すぐに静岡圏内の現場を見に行きました。標高1500mのところで1泊して、そこからさらに500m登って、どこを通るか確かめた。掘った土の置き場所になりそうな場所も探して、JR東海に教えました。最初はそのくらい全面的に協力していたのです。水の問題は、最初は軽視というか、まったく気がつきませんでした。

次ページ水問題で譲れる部分は「皆無」
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