人気の「紀ノ国屋ジッパーバッグ」意外な用途 高級スーパーを支えるグッズ戦略

拡大
縮小

人気に火が付いた理由の1つはジッパーバッグには珍しい長方形なことに加え、サイズ展開が豊富なことにある。紀ノ国屋は当初、例えば小さいサイズは小型の野菜や果物、大きめのサイズはパスタやそうめんなど食品を収納することを意図して商品開発を行ったが、フタを開けてみたところ、実にさまざまな用途で使われていることがわかった。

実際、ネットやインスタグラムなどでは、バッグの大きさに応じて化粧品、薬、文房具、パソコン周りのアイテム、折り畳み傘、マスク、お金など、さまざまなモノを収納している様子がうかがえる。前述のとおり、マチがついているため、冷蔵庫や食器棚などに立てて収納できるのも重宝されているようだ。

食品だけでなく、化粧品や文房具、薬などさまざまなモノを収納するのに利用されている(撮影:今井康一)

サイズによってジッパーの色が違ったり、ロゴが入っているという「ちょっとしたオシャレ感」も利用者の心をくすぐるポイント。加えて、「高級スーパーの商品」にもかかわらず、1パック152円(サイズによって入っている枚数は異なる)という値頃感もウケているようだ。

口コミでじわじわときている

「単価が安いので手に取りやすいのと、自分がいいと思ったものをSNSで共有したい、という欲求がうまく重なってヒットになったのでは。 1袋買ってお裾分けしたり、友達にもらったのがきっかけで買ってくれるようになった方もいるようです。口コミでじわじわときています」と、同社営業本部商品部でグッズを担当している古山瑛理子氏は話す。

とはいえ、紀ノ国屋もジッパーバッグが売れるのをただ見守っていたわけではない。初速で手応えを得たこともあって、例えば実店舗が周年を迎える際などに、ジッパーバッグのサイズ違いの「お試しセット」を、2000円以上の買い物客にプレゼントをするなどしてきた。これを手にした客が、その後リピーターになるケースも少なくないという。

5種類のサイズのジッパーバッグが入ったお試しセット(撮影:今井康一)

そもそもスーパー紀ノ国屋といえばオリジナルグッズに強く、ファンが多いことでも知られている。有名なのは紀ノ国屋のロゴの入ったオリジナルバッグで、誕生したのはなんと今から24年前の1995年 。

発売当初は2種類しかなかったが、お客さんから「自転車のカゴに入りやすいものが欲しい」という声が上がったかと思うと、2年後には“サイクルショッピングバッグ”として商品化。その後も、時代とともに種類が増え続け、新店舗の開店やリニューアルのたびに限定バッグが登場、現在は色違いも含めると60種類ほどのラインナップに上っている。

オリジナルバッグの販売数は絶頂期に比べると10分の1ほどになったというが、それでも一定数のファンは健在する。羽田空港の国内線ターミナル店では“お土産需要”のためにバッグの売り上げはつねにトップで、昔は九州で紀ノ国屋のバッグを持って歩いていると、「どうしても欲しいから、ここで売ってくれ」と言われた人もいたとか。

次ページ11月には新業態も
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT