韓国「チョ法相」問題があぶり出した世代間対立 1980年代の民主化闘争世代は特権階級である
文政権の中枢ポストには1980年代の民主化闘争時の過激な元運動家が数多く就いている。彼らの目指しているものは、若いころと同じで、「政治」そのものではなく、正義を実現するための「運動」である。独裁政権時代には広く国民の支持を得たかもしれないが、今の時代はどうだろうか。
浮世離れした観念論的傾向が目立つ文政権には、目の前で日々起きる内政外交の問題を巧みに利害調整し、妥協や譲歩によって解決するというリアリズムの香りは少ない。日韓関係がここまで悪化した背景にも、文政権の硬直性があることは否定できないだろう。
強烈な力を持つ韓国政治の「デモ文化」
韓国政治における「デモ文化」は強烈な力を持っている。独裁政権だった初代大統領の李承晩を倒したのは、大統領選挙の不正問題に怒った1960年の学生デモで「四月革命」とも呼ばれている。586世代が活躍した1987年の民主化闘争では、最大で全国で180万人が参加したとされている。そして、朴槿恵政権を倒したのも全国に広がった「ろうそくデモ」で、参加者はやはり最大で100万人を超えた。
そして今、かつてデモによって軍事独裁体制を倒し民主化を実現した人たちが、学生デモの標的になっている。規模はまだまだ小さいものの、法相任命を強行した文政権の観念論的自己中心主義がきっかけとなって、若者の批判は既得権をむさぼる586世代に向かいつつある。
しかも今回のデモは、軍部独裁体制や保守政権という特定の政治勢力批判ではないという特徴を持っている。つまり586世代がしがみついている既得権、社会に広がる合法的不平等や不公正が問われているのだ。
そういう意味では、これまでの「保守vs進歩」という硬直的な韓国政治の構造を大きく変えてしまいかねない、新しい政治の胎動なのかもしれない。
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