「アベノリンピック」で2020年まで景気拡大 竹中平蔵氏が語る東京五輪の経済効果(上)

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大きなセーブ・フェイス効果

加えて筆者は、ハード・ソフトの効果を超えたより大きな効果として、第3のセーブ・フェイス効果を指摘したい。

これまでも多くのエコノミストたちが、オリンピックの経済効果について議論してきた。そうしたなかでとりわけ注目されるのが、カリフォルニア大学のローズ教授らの研究だ。彼らは、1950年から2006年までのあいだにオリンピックを開催した国を統計的に調査し、その前後で貿易が3割も増加しているという興味深い事実を発見している。

その背景にあるのは、オリンピック開催国という面子を保つために、多くのケースで貿易や為替に関する国内の古い規制が取っ払われたという点だ。要するに開催国として対外的な〝面子を保つ(セーブ・フェイス)〟必要に迫られ、結果的に国内改革が進み経済が活性化されたのである。この効果は、既得権益をもった人たちが奇妙な理屈をかざして、世界では当たり前の経済改革に反対してきた日本で、とりわけ期待したい効果といえる。

わかりやすい例として、羽田空港の国際線拡大がある。もう10年以上も前から、筆者らは経済財政諮問会議の場で羽田の国際化を主張してきた。その結果、ようやく近年になって、まだ限定的ではあるものの羽田の国際化が進展してきた。しかしそれでも十分な成果が挙げられない要因として関係省庁が指摘するのが、「千葉県の反対(もしくは成田の反対)」である。たしかに成田空港を建設するに当たり、もはや羽田空港が限界であり新たな空港が必要であるとの認識が広く共有された。成田空港の建設自体、一部の大反対があり関係者がそうとうの苦労をしたことも事実だ。

しかし、海外から日本を訪問する人びとからすれば、東京と千葉の関係はほとんど理解されないだろう。近年になって、都心に近い空港の重要性が世界的に見直されるなかで、羽田空港の活用拡大は当然の方向に映る。そうしたなかで、過去の経緯を引きずって羽田の国際化が進まないならば、日本全体の利益が大きく損なわれることになろう。過去の経緯はいろいろあるが、訪問客の利便を第一に考え対外的な面子を保つために、また日本の利益のためにも、オリンピックを一つの契機に「リセット」して新しい空港システムを整備する……こうした効果が期待される。

Voice2014年2月号より 後編は2月20日公開予定です)

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