「アベノリンピック」で2020年まで景気拡大 竹中平蔵氏が語る東京五輪の経済効果(上)
背水の陣で臨め
2020年、東京でオリンピック・パラリンピックが開催される。誘致が決まった直後から、筆者は“アベノリンピック”いう表現を用いてきた。アベノミクスという経済政策に、オリンピックという追い風が吹く。東京都の試算によれば、その生産波及効果は7年で3兆円となっている。しかし現実の効果は、それよりはるかに大きいだろう。オリンピックには、経済面で3つの効果が期待できる。3つの効果とは、
1. 通常のハードの経済効果
2. ソフト・パワー効果
3. 「セーブ・フェイス(面子を保つ)」効果
だ。筆者らの試算(森記念財団・都市戦略研究所による)では、適切な政策運営さえ行なえば従来試算の7倍、うまくすればそれをはるかに凌ぐ効果があると考えられる。
いうまでもなくオリンピックに期待するのは、スポーツを通した感動であり、経済効果はあくまで副次的なものだ。しかしいまの日本にとって、オリンピック・パラリンピックがもたらす効果を有効に活用することの意義はきわめて大きい。逆に、このチャンスを逃せば、本物の経済再生を実現する貴重な機会を失うことになる。重要なことは、オリンピックの経済効果は、決して待ちの姿勢で実現されるものではないという点だ。人材確保、資金調達、規制改革など課題は山積している。これを実現するという強い意志が、政府にも民間にも求められる。バブル崩壊後、経済停滞を続けてきた日本にとっては、いわば背水の陣で臨む覚悟が必要だ。
以下では、ハードの経済効果、ソフト・パワー効果、セーブ・フェイス効果という3つの効果の各々について議論する。そのうえで、東京がいま大きく変わりつつあり、これまで容易にできなかったさまざまな改革の必要性とその効果を実感できる環境が生まれている。オリンピックが開催される2020年は、すでに多くの政策目標の最終年となっている。たとえば、財政健全化達成の目標年次だ。6月の成長戦略で示されたKPI(キー・パフォーマンス・インディケーター)の主要項目に関しても、ビジネス環境ランキングを15位から3位に引き上げる、対内直接投資を2倍にするなど、30項目が2020年を目標年次としている。オリンピックは、日本社会全体に強い求心力をもたらすことが期待される。こうした点をも踏まえ、アベノミクスをパワーアップするためにも、2020年オリンピックを視野に入れた包括的な政策プログラム「改革2020」の作成を提言したいと思う。