実録!「連帯保証人」になってわかったMMTの本質 会社を畳んで考えた「貨幣とは負債である」

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アレクサンドリア・オカシオ・コルテス(以下AOC)や、バーニー・サンダースの演説を聞いていて強く感じたことがある。

経済格差や、差別や、失業を、個人の問題ではなく、社会の瑕疵(かし)であると考えている彼らは、自分たちが何を主張し、どんな政策を実行すべきかについて、明確なヴィジョンを持っており、左派は本来的に何を言うべきなのかに関して、ほとんど迷いがないということである。

一方、日本のリベラル政治家は、実現したい目的は同じでも、自分たちが何を言うべきなのかについて、所信があるのか疑わしく思うことがある。

例えば、社会保障の充実や、企業に対する累進課税や資産課税、教育や医療の無償化のような主張をしても、「それは理想だが、財源はどうするのかね」「財政赤字は借金のツケを将来先送りしているだけじゃないか」「ハイパーインフレになったらどうするんだ」と言われるとつい口ごもってしまうことになる。

だからグランドデザインを提示できず、年金問題や、緊縮財政といった単独のテーマでしか、政府与党に迫ることができない。

民主党時代の野田佳彦首相や蓮舫議員に典型的に見られたように、左派もまたプライマリーバランスを回復させるための緊縮財政は最重要の課題であると考えていたのであり、どこかで国民の多数意見に迎合的になる。もちろん、この考え方は間違っている。

財政赤字こそ、健全な状態

なぜそれが間違っているのか、なぜAOCやサンダースはあれほど強い自信を持っているのか。AOCにせよ、バーニー・サンダースにせよ、彼らの経済的バックボーンには現代貨幣に関する強固な信念と理解があるのだ。

その中心にあるのが、MMTである。MMTとは、モダンな貨幣論ということではない。もちろん、そうした含意もあるのだが、その真意はModern Moneyに関する理論、つまり現代貨幣というものについての、明確な理解とヴィジョンのことなのだ。

彼らにとっては、緊縮財政という言葉は、ほとんど問題にならない。財政赤字こそ、健全な状態なのだ。現代貨幣理論は、一方の赤字は他方の黒字であり、誰かの債務はほかの誰かの債権であるという複式簿記の常識から出発している。

つまり、政府の財政赤字は、国民の資産であり、それは借金のツケ回しではなく、将来の子供たちへの贈り物なのである。だから、国家こそが最後の雇い主となって、積極的な財政出動によって喫緊の課題であるデフレを脱却すべきなのだ、と主張する。

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