中国の自動車市場はバラ色か、販売台数は米国抜き世界最大へ
トラックが属する商用車の売り上げは昨年後半から激しく落ち込み、3年前の水準以下となった。5月に起きた四川大震災復旧のために財政支出が削減されて公用車使用が抑制され、9月以降は工業生産の減少で陸上輸送量も低下。リーマンショック後は中小輸出企業の相次ぐ倒産が拍車をかけた。また、昨年7月から3・8トン以上のディーゼル車に環境基準の「ユーロ3」が導入されたことも影響している。前半は値上がり前の駆け込み需要が起き、後半はリバウンドで買い控えが発生。農用車からの乗り換えは、乾き切った市場にとって恵みの雨となる。
「地方の時代」へ向け企業は内陸を目指す
日系メーカーのスタンスはまちまちだ。トヨタ自動車は「08年の58・5万台を上回りたい」としており、同じく47・3万台を売り上げたホンダも「シビックが好調な東風本田汽車で2ケタ増の18万台、広州本田汽車も新型シティの投入で前年(30・6万台)比増を狙う」と慎重な物言いにとどめている。一方、力が入っているのが日産自動車だ。08年の「ニッサン」「インフィニティ」2ブランド合計の販売実績は19%増の54万台と、伸び率でホンダの12%増、トヨタの17%増を上回った。「09年度は4・6%増の57万台を目指す」(中村公泰・東風汽車有限公司総裁)と鼻息は荒い。
日産の自信の一因は内陸部への分厚い店舗展開だ。中国では沿海直轄市・沿海都市を1級都市(全10都市)、各省都・内陸直轄市および大都市(全32都市)を2級都市、その他の中小都市(全309都市)を3級都市と呼ぶが、日産は340店強あるディーラーの55%弱が3級都市に集中している。「内陸の店舗網は一朝一夕には作れない。われわれの宝の山だ。内陸のお客も大都市と同様に、値段だけではなく品質や維持費を考えて選択するようになっている。いわゆる小金持ちも増えてきている」(中村総裁)。
「昨年、輸出経済を牽引してきた長江デルタ地域では台数が下がった一方で、内陸では2ケタ伸びた。メーカーが販売台数を維持したいなら、内陸での販売拠点が必要」(廖氏)。この点では日産は“変化”を先取りしていると言える。
ほかにもセダン一辺倒からハッチバックやSUV(スポーツ多目的車)などへの関心が高まるなど、中国はさまざまに変化している。需要が本格的に回復したとき、それらは大きなうねりとなる。なぎの水面下で、各社は激しくせめぎ合っている。
(週刊東洋経済)
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