サマンサタバサが紳士服コナカに買われる意味

多角化の失敗から原点回帰すれば勝算はある

サマンサタバサの業績の足を引っ張った最初のきっかけは、2013年から2015年にかけて買収したアパレルブランドの不振です。これは経営コンサルタント的には非常によく理解できる戦略的な失敗です。

もともとサマンサタバサはガールズ向けのハンドバッグ事業で大成功を収め、それで東証マザーズに上場しました。株式の時価総額も400億円を超えて経営も順調なときに、残酷なことに株主は「もっと成長しろ」と会社に望む。ここに成功企業の転落のきっかけがあります。

本当は成長せずに、サマンサタバサを支持してくれているガールズ層のハンドバッグへのニーズだけに向き合っていれば強さは揺るがなかったのではないでしょうか。しかし上場すると株主が成長を要求する。じゃあどこで成長できるのかというと、ハンドバッグで別の顧客層や海外市場を狙うか、別の商品で成長するのか、ということになります。こういったことで、大概の成功企業は転落し始めます。

失敗要因はバッグブランドの多角化

サマンサタバサは「ガールズ向けのアパレル事業のM&A戦略で成長しよう」という戦略を描いてしまったことで失敗が始まります。こういった「よく似た隣接市場への買収による多角化進出」は、会社が思っている以上にうまくいかないことがわかっています。

サマンサタバサが展開したバーンデストローズのブランドはやっぱりというか、ガールズの支持を得られず業績の足を引っ張ります。2015年度には121店あったバーンデストローズの店舗を70店まで減らすリストラをして、ようやく落ち着いたが成長領域にはなれなかったというのが1つ目の失敗です。

ここで2つ目の経営判断ミスが加わります。アパレルをリストラする一方でハンドバッグ事業を拡大しようとしたのです。この時期バッグのお店の出店が加速した。それもバッグブランドを多様化させる形で進めてしまったのです。

具体的には三越伊勢丹で展開する10万円台の高級バッグの「ラプリュム」、主力商品の「サマンサタバサ」、1.3万~1.8万円の「サマンサベガ」、郊外のショッピングセンターで売る7800~9800円の「&シュエット」などブランドラインはどんどん増え、それに応じて店舗数が増えていくのです。

伊勢丹でガールズではない上の層に高級品を売る一方で、地方のショッピングモールではガールズほどおしゃれやカワイイに敏感ではない層に安いバッグを売る。それでどうなったかというと、売り上げはそれほど増えない中で販売管理費がかさみ赤字転落に至るのです。

この状況とよく似た危機に陥って、その後、V字回復で復活した海外ブランドがあります。それはイタリアのグッチです。1980年代にグッチは多角化展開を進め、高級路線だった商品も大衆路線へと舵を切りました。

その結果、グッチはスーパーマーケットで売っている海外ブランドとなり、商品ラインもハンカチ、タオルからボールペンまで多岐にわたる状況になりました。そうなるとブランドのありがたみもなくなり、当時のグッチは「終わったブランド」だと言われたものでした。

結局グッチは、そういった多角化と大衆化を放棄して、創業時の強みのある高級路線に戻るため大リストラを行います。当然売り上げは大幅に減りますが、高級路線をつらぬいた結果、みなさんが知っている憧れの高級ブランドである今のグッチの位置まで、1度堕ちたブランドは再生されたのです。

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