サマンサタバサが紳士服コナカに買われる意味

多角化の失敗から原点回帰すれば勝算はある

サマンサタバサもやらなければいけないことは同じで、主力のハンドバッグブランドはいちばん強い部分に原点回帰することです。

そうだとすると、絶対に削ってはいけないのは、商品開発へのこだわりの部分、そして海外セレブに対する憧れを生む広告宣伝の部分です。ガールズがカワイイと思うサマンサタバサこそが、この会社の決定的な財産であり強みなのです。この強みは決して廃れてはいないというのが私の見方で、前述した「セレブを使った広告戦略が転換点にきている」という説に私が賛成していない点です。

コナカとの資本提携は必須だった

そこで冒頭のコナカによる資本参加に話が戻ります。

今回の資本提携の発表をまとめると、サマンサタバサの創業社長である寺田和正氏が会長兼社長を退くともに、経営はずっと一緒に戦ってきた藤田雅章・新社長に委ねる。そして株式はすべて旧知の友人であったコナカの湖中謙介社長に預けるという判断をしたわけです。

私はここでコナカがどういう会社なのか、というのがこのストーリーの鍵となると考えています。

コナカの主力事業の紳士服は失礼ながら、私はオワコンだと思っています。日本社会が変化をする中でスーツ需要は明らかに先細りになっていく商材です。昭和の時代の和服市場と同じような運命を、紳士服はこれからたどっていくと思います。この点はあくまで私見ではありますが。

それでもコナカが企業として興味深い点は、そもそもサマンサタバサよりも早い段階で業績の悪化が始まり、それをまがりなりにもしのいできたという実績です。ここのところコナカは1年ごとに黒字と最終赤字を行ったり来たりしていますが、それほど致命的な赤字ではない。そもそも経常利益は毎年2ケタの億円単位の黒字を続けています。企業として利益の出し方を知っている会社の決算だと私は捉えています。

ただし、です。単体業績は5年続けて赤字が続いている。紳士服事業はどうしても儲からない。そこを連結で黒字にもっていっている。つまり、紳士服よりも勝ちやすい土俵の関連会社を黒字にもっていく力がある企業なのです。

これは今のサマンサタバサに必要な条件です。財務中心に見ればやるべきことは明らかで、ハンドバッグ事業について、サマンサタバサブランドの強いラインに商品ラインを絞り込み、それ以外のサブブランドはリストラしてキャッシュの出血を止める。一方で主力事業には徹底的に投資をする。サマンサタバサブランドについてはデザインにも品質にも宣伝にも店舗にも、です。

ハンドバッグ事業を担うサマンサタバサ社では2019年までに店舗数を2割強削減しています。ただ厳しい言い方をすると各ブランド横並びで店を閉鎖してきたのが実情です。本当はブランドの廃止に踏み込まなければいけないのに事業部組織が逆に抵抗勢力になる状況が生まれています。

そしてこれは過去に成功した創業社長には絶対にできないタイプの仕事です。過去を否定する仕事であり、社員たちとの過去の約束を破る仕事だからです。

それで描かれたのが今回の資本提携のシナリオでしょう。サマンサタバサ創業者の寺田氏は持ち株をコナカに譲渡して一線を退く。とはいえこれだけサマンサタバサを大きくした人ですから、株式の譲渡益で悠々自適の暮らしもできますし、新ブランドで再チャレンジもできる年齢でしょう。

経営の実権はサマンサタバサをよく知る藤田新社長が引き継ぐ。そしてコナカは株主として財務コントロールと、過去に経験してきた大規模な事業リストラのノウハウを提供する。それに加えて外圧として積極的にリストラ関与することも期待できます。

今年の4月に寺田社長が退任を表明したときには、先行きの不透明感があって株価は下がった。しかし今回のニュースでは、経営のプロからみればむしろ先行きが見える新しい「構図」が示された。この点がサマンサタバサの株価が上昇した1番のポイントではないかと私は捉えています。

ビジネスの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 本当は怖い住宅購入
  • Amazon週間ビジネス・経済書ランキング
  • 令和を生きる若者のための問題解決法講座
  • 精神医療を問う
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
-

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

ログインしてコメントを書く(400文字以内)
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
台湾と中国のデジタルは違う<br>唐鳳・台湾デジタル大臣に聞く

台湾を代表する天才プログラマーの名声を得て15歳で起業した唐鳳氏。「デジタル民主主義」「開かれた政府」を体現した38歳の若き大臣が、これまでの実績、日本や中国との比較、IT教育やITの未来などについて胸の内を語りました。

  • 新刊
  • ランキング