中国FCV市場で日本企業が勝ち残る「3つの条件」 2019年は中国のFCV元年、トヨタも提携拡大

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地場部品メーカーの技術向上ニーズと自動車メーカーの高品質部品ニーズが、日系企業の商機につながり、現地市場に精通した地場企業と提携し、事業展開を図ることは効果的であろう。実際、地場部品メーカーの北京億華通科技や上海重塑能源科技はトヨタ製スタックなどを採用した燃料電池システムを地場自動車メーカーのFCVバス用に供給する予定だ。

3つ目は外資系ライバルの攻勢を打ち返すことだ。世界3大燃料電池車メーカーの一角を占める韓国の現代自動車は今年4月に中国四川省でFCVを生産すると発表した。

欧米企業も中国でFCV部品や燃料電池分野の布陣を急いでいる。バラードパワーシステムズは2013年から大洋電機や広州国鴻など地場企業5社にスタックや燃料電池技術を供給している。独ボッシュは、スウェーデンメーカーパワーセルの技術を活用し、吉利汽車や江鈴汽車など地場自動車メーカー向けの燃料電池部品の開発に取り組んでいる。

また、独エルリングクリンガーは蘇州工場で燃料電池開発センターを設け、来年までに年産能力1万台の燃料電池製造ラインを増設予定。部品のモジュール化で差別化を図り、地場企業にシステムの提供を狙う欧米系企業は、今後日系企業の競合相手になると思われる。

地方政府はFCV関連の資本誘致に注力

中国ではEVに対する補助金支給が2020年までに打ち切られる方針となるものの、FCVに対しては補助金支給が継続される見込みだ。地方政府は、FCV関連の資本誘致に力を入れており、EV産業の先を見越してFCV産業で全国をリードしようと意気込んでいる。

今後、中国でFCVが計画どおり伸びていけば、水素製造技術やFCV関連技術が得意とする日本企業が自らの新境地を開くかもしれない。日本のFCV部品関連メーカーは、中国の政策動向に留意しながら、パートナーの選別や販路の確保などにおいて、中国FCVメーカーを巻き込んだ市場戦略を練る必要があろう。

湯 進 みずほ銀行ビジネスソリューション部 上席主任研究員、上海工程技術大学客員教授

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タン ジン / Tang Jin

みずほ銀行で自動車・エレクトロニック産業を中心とした中国の産業経済についての調査業務を経て、日本・中国自動車業界の知見を活用した日系自動車関連の中国事業を支援。現場主義を掲げる産業エコノミストとして中国自動車産業の生の情報を継続的に発信。中央大学兼任教員、専修大学客員研究員を歴任。『中国のCASE革命 2035年のモビリティ未来図』(日本経済新聞出版、2021年)など著書・論文多数。(論考はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)

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