1強スタバが「コーヒー職人育成」を急ぐ理由 自社だけに限らず業界自体の発展も課題だ

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JBC参戦もその一環で、意識の高いバリスタの“他流試合”を会社も支援する方針だ。来年以降、同社バリスタの再挑戦に期待したい。

「三方よし」は、業界トップ企業の責務

引いた視点で言えば、ここまでカフェチェーンでダントツの存在になったからこそ、スターバックスの果たす役割も大きいといえる。どの業界でもそうだが、競合として健全に競い合う一方で、業界全体のパイが広がらないと発展しない。

コーヒー業界は拡大しており、例えばコーヒー輸入量は、直近の2018年は45万2585トン。この数字は1980年の2倍以上で、2000年に40万トンの大台に乗ってからは、19年連続で40万トン超だ。(いずれも生豆換算の合計。財務省「通関統計」をもとにした全日本コーヒー協会の資料)。

トップ企業の同社に期待される役割も大きい。そのキーワードは、近江商人における「三方よし」(売り手よし・買い手よし・世間よし)の精神だと思う。

コーヒー業界は、まだまだ閉鎖的な一面も残る。スターバックスも以前は「情報を積極的に公開しない会社」だった。だが近年は、課題を克服しようとする意識が出てきた。

今回紹介したバリスタの強化が、単に1企業の話に終わっては「世間よし」もない。同社のチャレンジが他社や他業界の関心も高め、バリスタという職種の地位向上となり、人材が底上げされて業界の発展につながるか。引き続き、活動を見つめたい。

高井 尚之 経済ジャーナリスト、経営コンサルタント

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たかい なおゆき / Naoyuki Takai

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆・講演多数。近著に『なぜ、人はスガキヤに行くとホッとするのか?』(プレジデント社)がある。

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