ディズニーが「パーク」に積極投資を続ける理由 マーベルやスター・ウォーズの新施設が次々

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アナハイムのギャラクシーズ・エッジで驚かされるのは、その街並みだ。建物の雰囲気や傷み具合は、レジスタンス(反乱軍)がそばにいるかのよう。ディズニーでテーマパークを開発する専門家集団、イマジニアリングのカースティン・マケラ氏は「細部に徹底的にこだわった。何度来ても新しい発見があると思う」と胸を張る。

自分だけのドロイド(自律型ロボット)やライトセーバーを作ることができるショップ、輸送シャトルを改造したレストランなど、施設の1つ1つにストーリーがあり、全体で街を構成する。スマートフォンのアプリを使って、宇宙都市の情報をさらに知ることができたり、ロールプレイングを楽しんだりすることもできる。

アナハイムのディズニーランドにある「ミレニアム・ファルコン:スマグラーズ・ラン」(記者撮影)

アトラクションは、宇宙船を操縦する「ミレニアム・ファルコン:スマグラーズ・ラン」。5~6人がチームとなり、パイロット、狙撃者、技術者の3つの役割に分かれてファルコンを操縦、その操縦の仕方によってストーリーも変わる仕掛けだ。

さらにフロリダのハリウッド・スタジオには、ウォルト・ディズニーの誕生日である12月5日に、新アトラクション「スター・ウォーズ:ライズ・オブ・ザ・レジスタンス」がお目見えする(アナハイムには2020年1月17日に登場)。8人乗りのライドに乗って戦いに参加するストーリーだが、「最先端の技術を使った、いままでにないアトラクション」(チェイペック氏)という。

このスター・ウォーズのテーマエリアについて投資額などは公表されていないが、「間違いなく1000億円は下らない」(別の関係者)。本物志向、惜しみない投資という点で、最近のディズニーの象徴的な開発案件といえる。

テーマパークはディズニーの下支え役

ディズニーにとって、テーマパーク事業の存在感は大きい。2018年9月期はパーク&リゾート事業の営業利益が44.7億ドル(約4700億円)と、全社利益の約3割を占めた(現在はパーク&リゾートとコンシューマ・プロダクツを含む組織に変更)。ディズニーの収益の柱は、いまもケーブル放送やテレビなどのメディア事業だが、ネット化の流れの中で同事業は減益傾向が続いている。

「スター・ウォーズ:ギャラクシーズ・エッジ」の街並み(記者撮影)

ディズニーは今後、全社を挙げて動画配信に打って出ようとしている。そうした中、安定的な業績を維持するテーマパーク事業は、ディズニー全体の下支え役になる。

映画やテレビでキャラクターを作り出し、それをテーマパーク、商品といった「リアル」の場で表現する。こうした一連のサイクルこそが、他のまねできないディズニー最大の強みだ。ディズニーにとって、テーマパークはゲストに体験を提供する重要なタッチポイントであり、「出口」でもある。

ここにきてマーベルやスター・ウォーズのアトラクションが増えているのは偶然ではない。これら2つのブランドが、ようやくディズニーならではのビジネスモデルに加わってきたということだろう。今後もディズニーパークは大きな変貌を遂げそうだ。

並木 厚憲 東洋経済 記者

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なみき あつのり / Atsunori Namiki

これまでに小売り・サービス、自動車、銀行などの業界を担当。テーマとして地方問題やインフラ老朽化問題に関心がある。『週刊東洋経済』編集部を経て、2016年10月よりニュース編集部編集長。

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