総合商社の未来、資源バブル後の生き残り戦略
“復活”の真価が試されるときが来た。
空前の資源高を追い風に、2008年3月期までは増収増益で走ってきた総合商社。09年3月期も、年間契約の鉄鉱石や石炭の価格が大幅に上がり、石油も年度前半に147ドルをつけたことから、連続増益は間違いない、と思われていた。
しかし、瞬く間に原油や銅など市場性がある資源価格は軒並み急落。年間固定価格の鉄鉱石や石炭も、販売数量急減の直撃を受けている。
資源だけではない。製造業が減産に次ぐ減産に追われる中、自動車、鉄鋼、化学品のトレードビジネスも大幅に悪化している。大手5社では、住友商事を除く4社が09年3月期業績予想を下方修正した。各社とも第4四半期の純益はゼロから300億円台と大幅失速を予想する。
商社復活はこのまま短命に終わるのか--。
資源バブルの陰で既存事業の底上げも
1990年代後半から00年前半まで、総合商社は冬の時代を過ごした。下位では、日商岩井とニチメンが単独での生き残りをあきらめ双日に統合。トーメンは豊田通商に吸収され、兼松は銀行支援下で「総合」の看板を下ろした。大手5社でも伊藤忠商事と丸紅が巨額の特損を計上、合併話が公然とささやかれた。
だが、リストラにメドがついた03年ころから業績は一気に上昇気流に乗る。最大手の三菱商事が04年3月期に総合商社初の純益1000億円を達成。3年後には4000億円に乗せた。2位以下も次々と1000億円クラブに入り、08年3月期には大手5社の純益合計は1兆4776億円に達している。
主要な牽引役を果たしたのは、言うまでもなく資源による利益増だ。原油や鉄鉱石、石炭などの資源価格が軒並み高騰、資源権益を持つ総合商社の利益は爆発的に伸びた。
資源はなぜ儲かるか。仮に原油価格1バレル当たり30ドルのとき、出資する油田のコストが20ドル、利益は10ドルとしよう。同一コストで価格が2倍の60ドルになれば、利益は40ドルと4倍になる。実際には操業費も増え税金やロイヤルティなどの変動費があるため、計算どおり4倍とはいかないが、それでも利益が倍以上にハネ上がるからだ。
しかし、総合商社の快走が資源高の神風だけに頼ったものだったわけではない。実は過去数年、非資源で三菱商事、三井物産、住友商事の上位3社は1000億円超の純益を稼ぎ出している。この間も、鉄鋼や化学品などで従来型のトレードビジネスに加え、事業投資でも着実に収益を上げてきたのだ。自動車ビジネスでは、新興国を中心に一部生産から販売、販売金融までバリューチェーンを構築してきた。
資源景気にしても、恩恵を享受できたのは、上流の資源権益へ絶え間ない出資を続けてきたからでもある。「00年前後のいちばん苦しい時期に、リスクを取って権益投資をしていた」と某社の資源担当者。ある役員も「数十年やってきて、脚光が当たったのは多分初めて。苦しい時代がずっと続いた」と回顧する。