恐るべしパズドラ。「オワコン」ではなかった! "カズノミクス3本の矢"で狙うガンホーの頂上戦略

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1本目の矢が「既存価値の最大化」。安定収益確保の基盤となり同社を代表するIP(知的財産)となったパズドラの、ワンソースマルチユースがそれに当たる。その尖兵となったのがスマホを持たない低年齢層向けの「パズドラZ」であり、ほかにもアーケードゲームやキャラクタービジネスにも展開している。

中でも目玉となるのが、2月中に発表予定のパズドラの新ゲーム投入だ。「既存ユーザーにとっては今までのデータを活用でき、かつ、今までのパズドラとはひと味違うもの」(森下社長)となるようだ。「開始から2年たち、当初からのユーザーにとってはさすがに飽きが生じている。ここをテコ入れし、アクティブユーザーの増加につなげたい」(同)と、その狙いを語る。

2本目の矢が「新規価値の創造」だ。パズドラの前に存在感はかすみがちだが、同社の他のスマホゲームも好調に推移している。パネルをめくりながら敵を倒していくRPG「ディバインゲート」は累計200万ダウンロードを突破し、アクションパズルRPGの「ケリ姫スイーツ」は同700万ダウンロードを超えた。「ケリ姫」はスマホゲームの国内売り上げランキングでも9位につけている。

そして同社が期待する新作が、2月10日にアンドロイド向けで先行配信するスマホのボードゲーム「サモンズボード」だ。「今までにないスタイルのゲームで、配信直前の今もバランス調整にこだわっている」(森下社長)という力の入れようだ。

 最後の3本目の矢が「海外展開の強化」。昨年10月に親会社のソフトバンクとともに買収した、フィンランドのスマホゲーム会社「スーパーセル」の活用がその柱となる。「クラッシュオブクランズ」「ヘイデイ」といった人気タイトルを擁する同社は、スマホゲームの売り上げランキングで世界2位(1位はガンホー)。両社での共同マーケティングを本格化するほか、海外支社での新規タイトルの世界同時配信も行なっていく方針だ。

「ガンホーは1番でなきゃダメなんです」

「ガンホーは2番では駄目なんです。1番でなきゃ駄目なんです」。目下、全世界のスマホゲーム市場で圧倒的な1位となった同社だが、森下社長にはその手綱を緩めるつもりはさらさらない。IT企業の参入などスマホゲーム市場の競争環境の激化に加え、自社の本質を「面白いゲームの開発」と明確に位置づける同社には、「パズドラを創ったガンホーだからこそ、パズドラを超えるゲームを創ることができる。オリジナルしかオリジナルを超えられない」(森下社長)という、強烈な自負心があるためだ。1月の月次単体売り上げは過去最高の165億円と、今期も幸先良いスタートを切った。

"パズドラバブル"と評されるような一時のブームで終わることなく、同社が引き続きスマホゲーム業界の王者に君臨できるのか否かは、この「3本の矢」の成否にかかっているといえそうだ。

風間 直樹 『週刊東洋経済』編集長

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かざま・なおき / Naoki Kazama

1977年長野県生まれ。早稲田大学政経学部卒、法学研究科修了後、2001年東洋経済新報社に入社。電機、金融担当を経て、雇用労働、社会保障問題等を取材。14年8月から17年1月まで朝日新聞記者(特別報道部、経済部)。復帰後は『週刊東洋経済』副編集長を経て、19年1月から調査報道部、同年10月より現職。著書に『雇用融解』(07年)、『融解連鎖』(10年)、電子書籍に『ユニクロ 疲弊する職場』(13年)など。

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