「何者でもなかった大学生」が夢をつかめた理由 「可能性を信じることで可能性は広がった」
死といえば、マヤ・アンジェロウと話してから数カ月後に、バナヤンは大きな悲しみと直面する。まだ59歳だった父親が、膵臓がんと診断されたのだ。
そしてその悲しみを、女優、実業家のジェシカ・アルバと共有する。26歳で最初の子どもを妊娠したことがきっかけで、彼女は自分の死について意識するようになっていたのだ。がん家系に生まれたからこそ死ぬのが怖く、それが子どもに害のない製品にこだわった会社「オネスト・カンパニー」の設立につながったのだという。
だが、アルバががんと死について語り続けることは、父親の身を案ずるバナヤンにとってつらいことでもあった。
(381〜382ページより)
アルバの言葉を聞いたバナヤンは、自分でも気づかなかった肩の荷が下りたような気持ちになったと記している。ここから先は、もうインタビューではなくなったとも。
個人的に、この部分は、世間知らずであるがゆえの失敗を繰り返してきたバナヤンが大きく成長した瞬間だと感じた。そしてそれは、次の出会いにいい影響を及ぼすことになる。
失敗は最高の贈り物なんだ
バナヤンが次に会ったのは、マイケル・ジャクソンのアルバム『スリラー』を大成功させたことで知られるプロデューサー、クインシー・ジョーンズだ。
ただバナヤンは、その時点で1つの怒りをため込んだままだった。少し前、インタビュー依頼に際して権力を持つ人間にコケにされたことを根に持ち、その記憶を頭の中から払拭できない状態にいたのだ。
だからクインシーが、若い頃、当時の音楽業界を牛耳っていたマフィアに根こそぎ持っていかれたという話を聞いたとき、「最悪ですね」と怒りを爆発させた。言うまでもなく、クインシーの過去が自分の体験と重なり合ったからだ。
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