これから金を買っても大きく儲かるのか? 金価格が今後も値上がりするための条件とは
2009年7月には米10年債利回りが3.4%台で推移する中、米CPIは前年同月比マイナス2.1%となり、実質金利は5.5%台に跳ね上がったのである。この過程で金は売られており、まさに実質金利の上昇過程で売り込まれたということになるわけである。このように考えると、今後の金価格の方向性は金利次第、さらに言えば、アメリカの実質金利次第であることは明白であろう。
金価格が上昇するには、実質金利の低下が不可欠だが、そうした状況になるには、名目金利が一段と低下するか、インフレ率が上昇するか、あるいはその組み合わせしかない。
アメリカの実質金利が大きく低下する可能性は高くない
いまは投資家の債券投資が過剰になっており、名目金利が異常な水準に低下している。さらに、原油相場が低迷するなど、インフレ率の上昇も見込みづらい。このように考えると、今後米実質金利が大きく低下する可能性は、実際にはそれほど高くないというのが実態だ。
市場ではFRBに対する利下げ圧力が強まっており、これが名目金利の低下をもたらせば、米実質金利の低下が金相場を押し上げる可能性はあるだろう。しかし、その余地にも限界がある。また、米名目金利が変わらない場合、インフレ率が2.2%を超えないと、金価格の理論値は1500ドルを超えないことになる。
金が1500ドル台を維持し、さらに水準を切り上げるには、実質金利の低下以外の心理的な押し上げ材料も不可欠だ。筆者は、今後も金はポートフォリオを守るうえで、きわめて重要な投資対象であると考えるが、今後の金融市場の動向次第では大きく値下がりするリスクをはらんでいることも理解しておく必要があると考える。
もっとも、材料次第では、割高に買われることは十分にある。2010年12月には、金価格は理論値から21%も割高に買われたことがある。現在の数値に当てはめると、金価格は1680ドル程度にまで上昇する計算である。金融市場の混乱が投資家の金投資を促すような動きになれば、一時的にこのような水準に上昇する可能性はあるだろう。また、アメリカがドル安政策を打ち出すことで、為替の面からドル建てで取引される金の割安感が意識される形で買われる可能性もありそうだ。
しかし、金価格は最終的には米実質金利差に収斂することを忘れてはならない。セオリーを無視した値動きは、その後大幅な調整を強いられることになるだろう。いまは金価格が上昇していることから、商品投資顧問(CTA)など投機筋の先物市場での買いが大きく膨らんでいる。
しかし、金価格が一転して下落に転じれば、彼らは売りに回り、それが金価格の急落を招くことになろう。市場には様々な投資主体が参加している。相場は多くのケースで理論的に動かないことが多く、暴騰・急落となることも少なくない。最終的には理論値に収斂することを知っていれば、市場の急変にも慌てることはないはずだ。
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