これから金を買っても大きく儲かるのか? 金価格が今後も値上がりするための条件とは

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それはともかく、ここまで金価格が上昇した理由は、世界的な低金利が顕著になったことが大きいだろう。一部には、米中貿易戦争やイラン情勢などを一種の地政学的リスクととらえ、これを背景に金が買われてきたと説明する向きもいるようだ。しかし、それは後講釈というか、無理に金価格の上昇の理由を探そうとしているだけであり、実態とは全く違う。

2008年の金融危機後、同年10月に金価格は680ドルの安値で底打ちし、その後2011年9月には、1920ドルまで上昇した。この間、FRBは2008年12月にフェデラルファンド(FF)レートの誘導目標を0.100-0.150%ポイントにまで引き下げ、この水準を維持した。

その後、2010年代に入ると、欧州債務危機が勃発し、金価格は安全資産として買われ、上記の1920ドルまで上昇した。このときは、明らかに金は安全資産として買われており、いまと事情が大きく異なる点には注意が必要だ。ちなみに、このときに米大手金融機関が「金相場は2500ドルまで上昇する」と高らかに宣言したが、その時点が歴史的高値となり、下落し始めたことも付け加えておきたい。

金価格を決める上で重要なのは「実質金利」

結局のところ、金価格を形成するうえで、最も重要なポイントは金利であり、それも実質金利である。市場金利は、2009年以降の量的緩和策で異常な水準になった。中央銀行が利下げを実施する一方、紙幣を印刷して市場から金融資産を買い入れるという量的緩和を継続することは、物理的には半永久的に可能なように見える。

しかし、これは最終的には資産バブルを醸成し、それを破綻させるだけであろう。金融市場は、そのような歴史の繰り返しである。しかし、実際になぜこのような政策が持続不可能かを説明するのは難しい。まして、バブルが崩壊する前に予測することはほぼ不可能だ。しかし、そのような政策により作られた架空の金融相場の最終章が、金価格の急騰ということであれば、それは非常に恐ろしい結末が待っているといえる。

中央銀行が実施している量的緩和策は、資産を市場から直接的に買い入れ、これにより金利の押し下げ効果を誘発することで、株価を下支えし、さらに自己株買いや企業買収、株式や不動産などの買いを誘発させてきた。まさに、人為的に金利を操作することで、資産バブルを生み出す仕組みである。しかし、このような緩和策は限界に達しつつあるのではないか。金利はすでに下限に近づいており、実際、多くの国債利回りがマイナス圏に突入している。

こうなってくると、金利という投資に必要なコストがなくなるわけであり、金などの金利がつかない投資対象は一気に優位性が高まることになる。

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