「女性部下が活躍する」上司は何を伝えているか 「期待」「共有」「機会付与」がやる気を引きだす

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2つ目の「き」は「共有」です。人材育成で必要とされる共有とは、一般的に、目標や成果、そして課題の共有、いわゆるPDCAサイクルを回すうえでの共有を指すことが多いのではないかと思います。フルキャリに対しても、目標や成果、そして課題を共有することが重要であることは間違いありません。

キャリア意欲と家庭環境を上司も知るべき

ただし、フルキャリについては、その共有の効果を最大化するうえで、その共有よりも前に、そして並行して行うべき重要な共有があります。「仕事やキャリアへの意欲の本音」と「働く本人を取り巻く家庭環境」についての共有です。

「仕事やキャリアへの意欲の本音」について、最初から本人がすらすらと口にする可能性は低いと考えます。少なくとも第1子出産後の復職であれば、そもそも本人が自分の本音を明確にしてから復職してくるケースはまれだからです。走りながらどうしていきたいのかを考えていくことが多いのです。

自分が何を大事にしたいのか、どのような葛藤があるのかがだんだんとわかってきたとしても、他人に伝えられるよう整理できるまでにはさらに時間が掛かるでしょう。大切なのは、本人がうまく伝えられないからといって仕事への意欲が低下していると早々に結論づけてしまわないことです。

「働く本人を取り巻く家庭環境」の共有は「そんなことを共有してよいのか」「どこまで共有してよいのか」と思われるマネジャーの方が多いと思います。

ただし、筆者が実施した調査では、フルキャリ本人は家庭状況を上司と共有することに対してネガティブではありませんでした。加えて、共有したいと考える目的は、業務上の配慮をしてほしいというよりも、仕事をしやすくしたいという理由が多い結果となりました。

「仕事やキャリアへの意欲の本音」にしても、「働く本人を取り巻く家庭環境」にしても、フルキャリが自分は本当はどうしていきたいと考えているのか、上司に家庭の状況を伝えてどうしたいのか、それぞれを明確にしていくうえでカギを握るのは、組織から、とくに周囲、中でも直属の上司からの「期待」です。

期待を実感、自覚することこそが、フルキャリに必要な「共有」を円滑に実現すると考えています。

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