「女性部下が活躍する」上司は何を伝えているか 「期待」「共有」「機会付与」がやる気を引きだす

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最後の「き」は、「機会付与」です。フルキャリが求めているのは、子育てしながらでもやりがいのある仕事に従事できる環境でした。都合がよいことをいっているということについてはフルキャリ本人がいちばん自覚しています。

それでも周囲の期待に応えたい、周囲の期待に応えることこそがやりがいであるとするフルキャリの仕事に対するモチベーションを、働き方に制約があるからと一律に都合よく片付けてしまうのは、もったいないのではないでしょうか。

チームメンバーのやりがいを、チームの成果につなげることこそ、マネジャーの腕の見せ所ではないでしょうか。やりがいを実感するためには、成長や貢献を実感できる機会があってこそです。

成果を出せる環境が整ってから機会付与するのではなく、機会付与をすることで成果を出す環境を早期に作り出す、そんな発想が有効だと考えます。

「ワークライフ&グロースバランス」の実現へ

フルキャリの活躍を最大限に引き出すマネジメントに重要なのは「3つの『き』」だと説明してきました。さらに、従来の「ワークライフバランス」の実現から「ワークライフ&グロースバランス」の実現へと、マネジメントの視点を明確にすることも有効だと考えます。

グロースとは、英語のGrowthで「成長」の意味で用いています。第一義的には、フルキャリ個人の「成長」のことを指しますが、個々の社員の成長の累積が事業の成長につながることを考えれば、ここでいうグロースの実現とは、社員による「自身の成長とそれを通じた組織への貢献」、つまり「成長と貢献」の実現を意味していると考えています。

もちろん、フルキャリ自身が「グロース」も含めた両立に挑戦する必要があります。フルキャリは少なくともさまざまなライフイベントが発生する前や発生直後は仕事に対する高い意欲を持っているにもかかわらず、日々の子育てと仕事との両立の中で、自分の仕事への意欲を見失ったり、過小評価したりする傾向があります。

そのような中で、フルキャリを抱えるチームのマネジャーには、フルキャリの「仕事でも自身を成長させたい」「周囲の人に貢献したい」という当初の想いを、自覚させ続ける働き掛けが求められます。

「ワークとライフの2つの両立でも大変なところ、グロースも含めて3つの両立を意識させるなんて、1.5倍頑張れということなのか」と思われる方もいるかもしれません。筆者は、その考えは必ずしも正解ではないと考えています。「グロース」を実感できることが、「ワーク」と「ライフ」の2つの両立の原動力になるのがフルキャリだからです。

むしろ、フルキャリにとっては、「ワーク」と「ライフ」の2つの両立「だけ」がうまくいくことを複雑に思っています。「グロース」への期待があり、実感があることこそが重要です。

部下であるフルキャリの「グロース」も含めて3つを両立させることは、フルキャリが、「ワーク」でも「ライフ」でも充実を感じ、それぞれでよいパフォーマンスを発揮するうえで必要不可欠だと考えます。

武田 佳奈 株式会社野村総合研究所未来創発センター上級コンサルタント

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たけだ かな / Kana Takeda

2004年、慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程を修了。同年、株式会社野村総合研究所に入社。以来、官公庁の政策立案支援、民間企業の事業戦略立案や新規事業創造支援などに従事。2018年4月より現職。専門は、女性活躍推進や働き方改革などの企業における人材マネジメント、保育や生活支援関連サービス産業など。著書に『モチベーション企業の研究』(共著、東洋経済新報社)、『東京・首都圏はこう変わる! 未来計画2020』(共著、日本経済新聞出版社)がある。

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