輸出規制で「日韓経済全面戦争」に突入するか

半導体から電気自動車まで代替品確保の動き

イルジン複合素材は、日本の貿易規制以前から現代自動車などと代替材を研究してきた。現代自動車側は「すでに研究をほぼ終えた状態であり、認証手続きだけをクリアすれば当面は韓国製品で代替できる」と言う。

問題は時間だ。認証手続きに少なくとも6カ月かかり、代替材の物性試験や量産テストを行う必要がある。もちろん、水素電気自動車や充電関連製品への需要はまだ小さいため在庫は十分にあり、当面の生産に支障を来す可能性は小さい。

炭素繊維の専門家で、韓国炭素融合技術院のパン・ユンヒョク院長は「韓国の炭素繊維技術は先進国と同水準にある。産業の基盤競争力となる素材分野への投資を増やせば、将来的な競争で生き残ることができる」と話す。

日本からの輸入依存度が高い一部の石油化学製品も、輸出規制の影響を受けるとされている。しかし、関連業界ではこの分野での生産余力は韓国に十分あり、供給ラインも多様だ。

日本からの輸入依存度が高い品目としては、キシレンとトルエンなどがある。キシレンは、ペットボトルと合成繊維をつくるテレフタル酸の原料であるパラキシレンを合成するために使われる。トルエンもまた、パラキシレンをつくったりシンナーなどの塗料をつくるために使われる。

日本の戦略物資輸入が閉ざされたわけではない

韓国貿易協会によれば、2018年に韓国は日本からキシレンを10億8500万ドル(約1088億円)輸入した。日本からの輸入比率は全体の95.4%になる。トルエンは4億7500万ドル(約504億円)を日本から輸入しており、同79.3%に達する。また、韓国の生産能力は輸入量を超える。パラキシレンメーカーの関係者は「韓国がキシレン、トルエンを日本から輸入しているが、これより数倍の量を生産して輸出している」と言う。

日本が石油化学品目の輸出規制を行う可能性は小さいという指摘もある。現在、現代コスモなどが日本からキシレンなどを輸入しているが、同社は現代オイルバンクと日本のコスモ石油の合弁会社だ。業界では、日韓合弁会社が輸入する品目に、日本政府は輸出規制を適用しないと見ている。

さらに、石油化学の原料を必ず日本から調達すべきということでもない。業界関係者は「物理的距離が近く、一時的に日本産製品の価格が落ちたり、必要な物量を急に調達するときになれば日本から輸入する。しかし、ほかの国からも十分に購入できる」と言う。

サムスン電子やSKハイニックス、LGディスプレーなどは、追加される輸出規制品目が何になるかを注視している。とくに日本企業の代替となる協力企業を確保するため、中国や台湾など中華圏だけでなく、ドイツやオランダなどで供給ラインを確保している。追加規制の対象になりそうな先端素材では、事前注文をうまく行っていたところもある。

ブランクマスクの場合、HOYAや旭硝子など日本メーカーから来年初頭まで使う分を確保したという。日韓対立が深まる前に、必要な量を事前に注文していたためだ。

日本政府が韓国をホワイト国から除外したが、韓国企業が日本の戦略物資約1100品目を輸入する方法がすべて閉ざされたわけではない。日本内の素材・化学企業がこれまでのように、包括許可の方式で輸出できる「輸出管理内部規定」(CP)が残されている。

韓国・戦略物資研究院によれば、日本は非ホワイト国へ輸出する際にもホワイト国と事実上同じレベルでの優遇措置を与えるCP制度を運営している。CP企業が戦略物資を輸出する際には、通常90日かかる審査期間が1週間程度に短縮される。1度審査を受ければ、ホワイト国と同じ3年間、輸出が自由になる。一種の輸出フリーパスということだ。

日本の経済産業省によれば、現在632社がCP企業として登録されている。このうち、東レやJSR、住友、昭和電工など日本の主な素材・化学企業も含まれている。ただ、CP認証を受けた企業でも、日本の政治状況次第では輸出自体が難しくなることもありうる。今後、輸出規制の対象になるフッ化水素など3品目をめぐって、日本政府は通常の個別輸出品目の審査よりも煩雑になる手続きを要求している。

(2019年8月19日号。キム・ユギョン記者。編集部で原文を一部編集・改変しています)

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