大企業も要注意! 市場マヒで銀行に殺到、資金繰り難の緊張高まる

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赤字決算続出で再び緊張感高まる

緊急事態に日本銀行は、残存3カ月以内のCPの3兆円までの買い上げを開始。残存1年以内の社債の買い取りも検討している。しかし、資金繰りに困っているのは低格付け企業。「今後、CPの格付けが条件のa‐1格よりも下がる企業が増えてくる」(モルガン・スタンレー証券・大橋英敏債券調査本部長)。一銘柄1000億円の上限もネックで、一回目の買い取りが予定の3000億円を下回った結果、一部の低格付け銘柄のCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)のスプレッド(企業破綻に対する保証料)が「ワイド化した。期間の面でも2~3年の長期資金が手当てできないと厳しい」(同)。

「産業活力再生特別措置法」の改正による企業への公的資金注入も政策投資銀行への丸投げで、実効力は未知数だ。

10年前の不良債権問題の反省から、融資の分散化が進み、メインバンクの意識が昔よりも、希薄になっている。電機や自動車、ノンバンクでは資金繰り不安で個別の名前がささやかれるなど年度末に向けての不安はなお、解消していない。

年度末を乗り切っても、来期が怖い。というのも、3月末の企業業績を反映して、銀行は多くの融資先の債務者区分を引き下げざるをえない。それによって、銀行の自己資本比率規制の分母であるリスクアセット(資産にリスクの掛け目を乗じたもの)が急拡大し、同比率の低下が予想される。

第3四半期では、金融庁の検査マニュアルの基準緩和により、中小企業向け債権中心に要管理債権が減少した。一方で、情報開示の早い大企業向け融資については、業績悪化により銀行内部の格付けが急悪化し、引き当てが急増している。

メガバンクでは、そうした事態も見越して、昨年暮れから、自己資本の増強を継続している。地方銀行も劣後を中心に、自力調達が可能なところは踏み切っているが、資本コストは高く、調達も難航している。09年度は、銀行の資本制約からくる“貸し渋り”が本格化する懸念が大きい。



(週刊東洋経済)
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