大企業も要注意! 市場マヒで銀行に殺到、資金繰り難の緊張高まる

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 2008年9月のリーマン・ブラザーズの破綻をきっかけに、市場機能はマヒした。10月以降、極端な信用危機から、銀行間取引市場のみならず、CP、社債の発行市場が停止。大企業から銀行への融資申し込みが殺到した。

目先、資金繰りに詰まっていない企業も、先行きへの不安から駆け込んだ。10月から12月初旬までに、メガバンク各行には10兆円を超す申し込みがあり、コミットメントライン(融資枠)の使用が急増。10~12月期で、三菱東京UFJ銀行では2兆円、三井住友銀行では1・9兆円と、前年同期比で大企業向け融資が拡大した。

急速な資金需要に、銀行ですら資金手当てのメドが立たず、大手行が大企業や地方公共団体から、大口預金を集めにかかり、そのレートもハネ上がった。昨年10月から金融債の発行がストップしているあおぞら銀行や新生銀行は、個人向け預金でも高いレートを提示している。

中小企業の資金繰りはより深刻。

08年10月31日から緊急保証制度の保証枠6兆円、政府系金融機関の融資枠3兆円が設けられた。銀行は保証枠の利用に奔走し、2月6日までで5・7兆円が使われた。

銀行の貸し出し動向を見ると、06年からは前年同月比で増加に転じていたが、中小企業向け融資は実はすでに07年9月以降、減少へと反転していた。銀行からすると、貸し倒れの増加が懸念されたからだ。

2000年前後、日本の不良債権問題から、銀行が資本不足に陥り、貸し渋りや貸し剥がしが横行した。このため、公的資金が注入された際、中小企業向け融資を増やすことが義務づけられた。だが、そこで導入されたスコアリング融資(信用リスクとの相関関係が高いとされる財務データや定性情報を基に点数をつけて融資判断するもの)は、後に不良債権化する事例も多かった。06年には3メガバンクグループがそろって公的資金を返済し、縛りがなくなったこともあり、中小企業向け融資には慎重になっていった。その背景には、内需が細る中で、中小企業の収益力が脆弱になっていたことがある。

一方で、銀行の資本不足による貸し渋りを防ごうという趣旨で、昨年末に改正金融機能強化法が成立し、銀行に資本注入するための公的資金枠として初年度で12兆円が用意されたが、銀行側の腰は重い。公的資金を受ければ、中小企業向け融資を増やす責務が生じるが、結果として不良債権が増えた場合、その責任が問われることに変わりはないと、考えているからだ。今のところ、検討を表明しているのは、北海道の札幌北洋ホールディングスと鹿児島の南日本銀行の2行だけだ。

緊急保証制度の実施にもかかわらず、日銀短観の12月調査によれば、9月に比べて、資金繰り、金融機関の貸し出し態度とも判断指数は悪化している。実体経済の悪化が加速しているからだ。倒産件数、負債総額とも前年同月比で増え続けている。第2次補正予算で保証枠は20兆円に、政府系金融機関の融資枠は10兆円に拡大された。が、中小企業にとって、キャッシュフローがますます細る中、資金繰りが厳しい状態は続く。


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