「うつの人に頑張れはNG」と言い切れない理由 前向きな言葉が「回復」を促す場合も
3つめの症状が「身体的な症状」です。中でも、睡眠障害と食欲不振が目立ちます。睡眠障害は、寝つきが悪い(入眠障害)、眠りが浅い(熟眠障害)、深夜や早朝に目が覚めてしまう(早朝覚醒)などの組み合わせで表れます。
そのほか、食欲不振や、それに伴う全身のだるさも、多く見られます。ただし、一部のうつ病患者は過眠、過食を示すこともあります。
うつ病の人に「頑張れ」はNG?
巷では「うつ病の人に頑張れと言ってはいけない」とよくいわれています。これは正しいともいえるし、正しくないともいえます。うつ病の人に接するときのマニュアルのようにして「頑張れと言ってはいけない」と覚えている人が多いようですが、必ずしもそうとはいえません。
うつ病は、職場で最も多く見られる精神疾患です。また憂鬱さ、不安、不眠といった症状は、誰もが少なからず経験しています。そのため、一見わかりやすい病気であり、そのせいで素人判断の危険にもさらされています。
しかし、一口にうつ病といっても、その症状は多様です。日常生活に影響が少ない軽症なものもあれば、自殺のリスクが高かったり、食欲不振で栄養状態が悪化していたりと、入院が必要なほど重篤なものもあります。そうした状態に合わせたアドバイスやケアが必要となります。
症状が重いときは、頑張るよりも、休養と治療が先決です。「頑張れ」とは言わないほうがいいでしょう。実際、「頑張りたくても、頑張れない」のがうつ病です。本人が怠けているわけではありません。
ただでさえ、頑張れない自分を責めている状態にある患者を、「頑張れ」という言葉がさらに追い詰めることになります。同じように「元気出して」「病は気からと言うし、気の持ちようだよ」といった言葉も、不適切です。
しかし、軽いうつ病の場合は対応が異なります。治療を進め回復に向かっていく過程で、頑張らなければならないときも出てきます。ほぼ寛解した状態にある人はもちろんのことですが、その途中にある人も、目標を定めて頑張らないといけないことがあるのです。