トヨタ「世界一のスポーツカーメーカー」への道

あのポルシェを超えるために必要なことは?

ル・マンで培った開発は、そのもののクルマでなくても、市販車に大きく息づいている。

「WECのマシンは宝の山だと思う。例えばエンジンの熱効率でいうと46%、システム熱効率は50%を超えているんです。これはコロンブスのたまごで、実際にできたら『できる』と思うけど、私が会社入ったときは30%くらいだったからね。でもできたという事実があれば、あとはそれをいかに市販車に落としていくかですから」(村田氏)

どうにかすればできることは、すでに証明されている。ならば、問題はいかにやるかというだけだ。

「ハイブリッドシステムだって、例えばエンジン500ps、モーターの500psを制御して、レーシングドライバーが意のままに操れるようにする統合制御は、ものすごい精度ですよ。そうじゃないと彼らは命懸けてくれない。彼らが信頼してブレーキ踏んでもらえるようなマシンが作れれば、それはすべてスポーツカーに生かせる」(同)

「車体の空力だって、風洞はお金がかかるからシミュレーションを駆使して、3Dプリンター使ってモデルをつくっています。軽量化のノウハウだって使える。実際のハードも、プロセスで使っているソフトも何もかもが、宝の山じゃないですか。毎年毎年クルマつくらなあかんなら、シミュレーション、MBD(モデルベース開発)、とにかくすべてを総動員して……実際にル・マンで優勝してるわけです。そんな宝の山はなかなか転がってないですね」(同)

「制約」が育てる時代

なぜ、そうした技術、ノウハウが育つためにレースが最適な場なのだろうか。

「まずは時間がない。その中で毎年、世界中のコンペティターと戦わなきゃいけないから。ポルシェ、アウディと戦争しているときは、彼らに勝たないといけないわけです。そのとき、ある技術を使ってみたけど失敗した。まあいいかって言ってたら、僕らはたたきのめされます、完膚なきまでに。ブランドとブランドの戦いだからね。この本気さ加減、戦場、時間感覚ですね。しかも湯水のように金を使ってレースやる時代も終わったから、昔F1やってた頃の何十分の1の予算で世界選手権をやらなきゃいけない。そういった制約が育てるんだと思う」(同)

「市販車でも、厳しい条件を出すと『それはできない』って言うヤツもいるけれど、レースのレギュレーションだと思えば、できないもクソもない。できないって言った瞬間にレースに出られない。できないって言ったらたたきのめされるだけですよ。そんな雰囲気、文化をGRカンパニーには持ち込んで、世界一のスポーツカーカンパニーにしていこうとしているんです」(同)

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