トヨタ「世界一のスポーツカーメーカー」への道 あのポルシェを超えるために必要なことは?

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「ル・マンとほかのレースの最大の違いはやっぱり時間で、3時間とか4時間のレースは速い車で、たまたまそのときのレースの要件に合えば勝ててしまう。だけど24時間っていうのは、3時間のレースに対して時間が8倍。いろんなことが起きる。暑かったり寒かったり雨が降ったりヒョウが降ったり、周回遅れと接触したりいろいろなことが。ル・マンの女神もしくは神様みたいな人が全チームに提供するそのお題に、クリアな回答を出し続けられるチームのみ優勝することができる。だからここ3~4年は“速いクルマ”、“速いチーム”から、“強いチーム”に変わらない限り一生優勝できないと考えて活動してきたんです」(村田氏)

それは果てしない世界である。クルマの中の1つひとつのコンポーネントについて完璧な性能、信頼性、組付けを実現する。それを1台のクルマにする際も、完璧にできなければいけない。

できあがったマシンをサーキットに持ち込み、チームはそれを完璧なオペレーションで走らせる。しかし24時間のレースでは、本当にいろいろなことが起こるのだ。どれだけやっても完璧という領域にたどり着くのは難しい。

モチベーションを維持する難しさ

「そのすべてを完璧にする、イコール強いチーム、イコール神様に選ばれたということです。だから何年か前から僕は、モータースポーツ部長時代はメーカーさんとか部員、TMG(トヨタ モータースポーツGmbH、2019年7月までドイツ・ケルンを本拠とする同社の社長を務める)に来てからはTMGの社員、チーム、オレカ(WECのチームを共同運営しているフランスのレーシングチーム)の人たち含めて、ずっとその世界を広げてきた。人間って首根っこ捕まえて引きずり回しても機能しないので、本人が頭で理解して、腹に落として自分で動けるようにならないといけない。そういうことをしてきたんです」(同)

それでようやく優勝したのが2018年。でも、そのままとはいかなかった。

「ル・マンが終わった瞬間はほっとしたし、1回灰になって何にもやる気しなくなりましたよ。でも次のシーズンが始まって、チームを俯瞰して見ると何か緩んでる。去年までのレースは本当に勝ちたかったからみんなのベクトルが完璧に合ってるし、ものすごいエネルギーでそこを突破しようとしていたんだけど、そこまでのモチベーションにはなかなかなれないというか。いいトリガーになったのは今年に入って行われたセブリングでの合同テストで、ここでマシンがいろいろと壊れたんですよ」(同)

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