最賃上げても消費税廃止は低所得者を苦しめる 第4次産業革命時代における「意外な関係」

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日本では、人件費の場合、業務を委託する企業は従業員が支払うべき所得税と年金や医療などの社会保険料を天引きするが、物件費の場合、所得税や社会保険料の天引きは不要で、それらに代わって消費税を払う(所得税や社会保険料は委託先の企業で生じる)。

第4次産業革命の波が押し寄せている今、業務の受発注はネットを介して柔軟にできるようになり、「雇用的自営」が増えると見込まれている。

雇用的自営とは、就業者が取引先との雇用関係はないため独立した自営業者と位置付けられるものの、取引先から指揮命令を受けるため、働き方は独立的と言いにくい人たちだ。雇用的自営で働く人たちへの対価は、人件費ではなく、物件費である。つまり、彼らへの対価に対して所得税や社会保険料が天引きされることなく、消費税がかかる(もちろん、今は免税点以上の事業者だけかかるが、2023年以降インボイスが導入されると、免税点以下でも課税事業者にならざるを得ず、消費税がかかることになる)。

成果型報酬で最低賃金制度が形骸化する恐れ

こうした働き方が、第4次産業革命が進むデジタル社会では、ますます増えて当たり前のようになるとみられている。兼業や副業が浸透すればなおのこと、日本型雇用慣行が崩れてゆけば、フリーランスという働き方が増えていくだろう。

こうした働き方をする就労者は、対価を支払う取引先が労働時間の管理を厳密にしないため、労働時間よりも成果に応じて対価を受け取ることが多くなる。つまり、賃金という形で対価を受け取るのではなく、役務の提供に対する「業務受託収入」という形で受け取ることになるため、最低賃金制度で労働時間に応じた最低限の賃金を規制しても実効性を持たない可能性がある。

もちろん、今の労働法制では、歩合給労働について最低保障額を規定している。しかし、成果型報酬の最低限を実効的に規制できないと、最低賃金制度は形骸化する恐れがある。

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