セブンペイ突如廃止!見切り発車の重い代償 わずか1カ月でサービス廃止を決断したわけ

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会社側は、わずか3カ月でサービスを廃止する理由について、チャージを含めたすべての機能再開には時間を要すること、その間にサービスを継続すると支払いのみの不完全なサービスとなること、セブンペイに対する顧客の不安感が根強いことを挙げた。未使用のチャージ残高は10月以降、順次払い戻す。不正アクセスの被害者には全額を補償する方針も示した。

問題が起きた原因は、複数端末からの不正ログインやセキュリティ対策が甘かったためだ。スマホ決済の基本的な安全対策である「2段階認証」の仕組みも導入しなかった。

この点について、セブン&アイHD執行役員デジタル戦略推進本部の清水健デジタル戦略部シニアオフィサーは「金融を担当するチーム、アプリを担当するチームと、チームごとで動いたため、全体として横串を通した最適化ができていなかった」と唇をかむ。

サービス開始前のテストは十分ではなかった

また、2018年2月にセブンペイの開発に着手した後、同年6月にリリースされたセブン-イレブン用アプリにセブンペイの決済機能を搭載すると決定した。セブン用アプリはクーポン配信などの機能しかなかったが、後付けで決済機能を持たせた形となった。

サービス開始前のテスト期間について、運営会社であるセブン・ペイの奥田裕康取締役営業部長は「必要最低限の期間は確保できた」と弁明したが、セブン&アイHDの清水氏は「安全性のテストの範囲と深さが適切ではなかった」と、決済機能に必要な安全性を十分に確認できるテストではなかったと認めた。

セブン&アイHDは今回、騒動発生に至った経緯や組織の意思決定などガバナンス面を検証するために、弁護士を含めた調査委員会を社内に設置した。原因究明や再発防止策を検討し、1~2カ月後に取締役会に調査結果を報告する予定だ。

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